出水期が近づき、水害への注意が必要な時期を迎える。県内では昨年、豪雨などによる甚大な被害は見受けられなかったが、東北、北陸で大規模な線状降水帯が発生するなど、地球温暖化による大雨が全国各地で発生。改めて水害への備えの必要性を感じさせた。そこで岐阜大応用気象研究センター長の吉野純教授に気象情報の活用や注意などを聞いた。また、県内の中学生による精力的な防災活動や、県が注力する「災害・避難カード」の若者への普及についても紹介する。(この企画特集は5月に取材しました)
早めの警戒、情報生かす
岐阜大応用気象研究センター長 吉野純教授に聞く

県内での大雨といえば、2018年の西日本豪雨や「令和2年7月豪雨」が記憶に新しいだろう。岐阜は河川が多く、暖候期に入ると大雨による被害を受けやすい。過去を振り返っても水害に悩まされてきたことが分かる。
また、温暖化が進み、雨の降り方も激しくなっている。中でも線状降水帯は同じ場所に数時間停滞し、強い雨をもたらす。比較的大雨が少ないといわれる東北でも昨年、線状降水帯が発生して甚大な被害が出た。
線状降水帯の予報は昨年6月から始まり、気象庁が13回発表して実際に線状降水帯が発生したのは3回で発表せずに発生したケースが8回だった。ある程度まとまった雨の予報は正確性が増しているが、局地的な豪雨となる線状降水帯の予測は現状では難しい。それでも線状降水帯の予報は重要な情報源の一つ。危険スイッチを入れるタイミングとして活用してほしい。予報が空振りでも、未来の豪雨予測の精度向上のために貴重なデータを蓄積できたとご理解をいただきたい。
さまざまな気象情報が発信されて戸惑うこともあるだろう。情報を誤って活用すると、逆効果になることもある。さまざまな情報を適切に選択して、正しく避難に活用することが重要だ。例えば、各市町村が発信する避難情報は、対象地域を絞り具体的にどんな行動を取るべきか分かりやすく説明してくれる。日頃から避難行動に直結する情報として留意してほしい。
気象をビジネスにアナリスト養成 オンライン講座開講
岐阜大では今年4月から気象データを分析して、気象リスクへの対応策を提案できる人材を育成する「気象データアナリスト養成プログラム」を開講した。県内外の社会人29人、大学院生5人の計34人がオンラインで受講する。農業や土木業、IT業など受講者の顔ぶれもさまざまだ。各自治体での防災計画作成やBCP(事業継続計画)対策にも気象データアナリストの助言は役立つ。多くの気象データアナリストを育成し、全国各地に人材を輩出できたらと思う。
現在、気象データを防災だけでなく、ビジネスでも活用する動きが広がっている。販売時の売り上げに天候が影響する飲食物などは、気象データの活用が有効的だ。天候を考慮してビジネスの計画を立てれば的確な仕入れができ、無駄な廃棄を減らせる。農業や土木業にも有効的で、勘や経験だけでなくデータに基づいた効率的な作業を可能にしてくれるだろう。