お盆時期の台風7号の影響で、全国各地が大雨に見舞われた。関市板取では、24時間雨量が観測史上最多の331・5ミリを記録した。県内の被害は床上・床下合わせて58棟が浸水。美濃市内では、市道橋の一部崩落や複数の林道で路側崩壊などの被害が発生した。甚大化する自然災害に対して、どう対応すべきか。改めて防災との向き合い方が問われている。30年以内に起こる確率が70~80%とされる南海トラフ巨大地震も懸念される。そこで岐阜大地域減災研究センターの村岡治道特任准教授に、有効な防災対策について聞いた。また、中学生ながら防災士の資格を取得した林宏瞭(ひろあき)さんの活動についても紹介する。
 

各自で備えを徹底 防災の常識、活動見直しも

岐阜大地域減災研究センター 村岡治道特任准教授に聞く

住民同士が顔を合わす場で、防災に関する情報を発信する重要性を説く村岡治道岐阜大特任准教授=岐阜市柳戸、岐阜大

 阪神・淡路大震災をきっかけに、地域防災の重要性が高まった。地域住民による救助活動が功を奏して下敷きになった人の命を救ったケースが多かったのだ。しかし、被災後の共助を強調しすぎて、事前の備えが軽視されていると感じる。

 同震災から四半世紀以上たったが、自宅や家具の揺れ対策、被災後の生活に必要な物資の備蓄といった基本的な備えを完了していない人が多い。個人の備えすら不十分なのに、被災後の共助が可能だろうか。

 いつ起きるか分からない自然災害に対して、どう備えるか。「被災後の共助」を目的とした形式的な訓練では防災効果を得られない。防災と名乗るなら、効果や安全の確保にこだわってほしい。そのための備えを各自で今のうちに完了することを土台にすべきだ。

 現在の防災啓発では意識の向上で止まっており、効果の確保にたどり着かない。私は「効果の獲得、向上、継続」の「防災の4K」を基本と考える。まずは防災の手順を知り、自分と家族の身を守る効果を獲得することが大事。獲得した効果の向上と継続が結果を左右する。

 災害後の被害拡大を防ぎ、復旧を促すことは必要だが、無防備なまま被災しては手に負えない状態に陥り、挽回できない。超高齢社会となった今、働き手不足、財政難などもあり、復旧復興への人手と資金を十分に確保することはもはや困難だ。既に日常の自治会活動でも被災地のボランティア活動でも直面している問題だ。これを踏まえて「備えを各自で今のうちに完了」が不可欠だ。

防災、減災について講演する村岡特任准教授=岐阜市学園町、早田小学校

 また、防災の共助には「事前の共助の計画」を勧めている。高齢者ら災害弱者宅の家具転倒防止やガラス飛散防止を、近所の防災人材や若者らが手伝うことが事前の共助に当たる。例えば各地区で毎週1軒の物理的な対策を行えば、1年間で50軒が対策完了となる。このような効果を今のうちに確保し適切に維持補修しておけば、防災訓練がなくなっても対策効果は継続できる。効果の貯蓄を行うラストチャンスが今だ。タイムリミットは目前に迫っていると言いたい。地域の防災リーダーには、家具固定や窓ガラスの飛散防止シート張りを支援するチームなどの育成と派遣、家庭用防災グッズの共同購入などのマネジメントを行ってほしい。

 また、地域で行われる総会やお祭り、プライベートな趣味の集まりの場などを洗い出してみてはどうか。公民館の利用状況を見れば、住民同士がさまざまな交流をしていることが分かる。今後は防災や自治会以外の場でも、一人一人の防災効果の獲得に取り組む場にしてほしい。複数の地域住民が顔を合わす場で防災に関する情報を提供し、防災効果の獲得を促す狙いだ。

 また、私は避難というワードをできるだけ使わず、「安全確保」と言っている。避難所であれば「安全確保が可能な場所」と言い換えている。「避難・避難所」というと、最寄りの学校や公民館などへ一分一秒を争って移動するようなイメージを持つ人が多い。このため、災害発生時にはそこに行かなければならないと思い込んでいる。地震が発生して屋外に出たことで落下物の下敷きになることが懸念される。水害や土砂災害の影響を受ける学校や公民館などへ移動した結果、孤立や立ち往生することは既に発生している。安全確保という基準を持つことで、自助で取り組む防災活動の手段とタイミング、場所を選別しやすくなるだろう。

 地震発生時には「机の下にもぐれ」というが、けがをしない安全な場所へ数秒以内で移動しなければ、安全ではない。「効果の獲得、向上、継続」を評価基準に、これまでの防災の常識や活動を見直してはどうだろうか。
 

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