出版された「アウシュヴィッツの聖人を追いかけて―ある被爆者と桜守の物語」
 コルベ神父らの生きざまを描いたノンフィクションを執筆した阿部菜穂子さん=5月、英南部サリー州(共同)

 【ロンドン共同】戦前の長崎で布教し、第2次大戦中にナチス・ドイツの強制収容所で殺害されたポーランド人のコルベ神父らの生きざまに光を当てたノンフィクションが17日、日本で出版された。英国在住のジャーナリスト阿部菜穂子さん(67)が昨年、英語で発表し、反響を呼んだ著作の日本語版。

 著書は「アウシュヴィッツの聖人を追いかけて―ある被爆者と桜守の物語」(岩波書店)。コルベ神父はナチスがポーランドに設けたアウシュビッツ強制収容所で、餓死刑を宣告された別の収容者の身代わりとなり、最後は薬殺された。

 神父に影響を受けた日本人2人も主人公。長崎で被爆し、修道士の道に進んだ故小崎登明さんと、戦争の贖罪と友好のために海外へ桜の寄贈を続けた北海道七飯町の浅利政俊さん(94)だ。

 英語版は英紙タイムズなどに書評が掲載され、話題となった。阿部さんは世界全体が右傾化し、自国中心主義に走る風潮が第2次大戦前に似ていると危惧する。「彼らの生き方を伝えることが平和へのメッセージになれば良い」と話した。