中国でスパイ活動をしたとして北京の裁判所が実刑判決を下したアステラス製薬の日本人男性社員に対し、中国当局が取り調べの際、罪を認めた場合は量刑が減軽される制度を説明し自白を促していたことが20日、分かった。複数の日中関係筋が明らかにした。事実上の司法取引。男性社員は最終的に容疑を認め、16日に懲役3年6月の実刑判決を受けた。上訴しない見通し。
邦人拘束事案で司法取引の実態が明らかになるのは極めて異例。中国当局による量刑説明は、2018年に施行された改正刑事訴訟法の新たな規定に基づく措置とみられる。規定を巡っては中国国内の有識者からも自白の強要につながる可能性が指摘されている。不透明な司法プロセスへの懸念が高まりそうだ。
裁判所は、男性が日本の情報機関の依頼を受けて中国の国内情勢に関わる情報を提供し、報酬を得ていたと認定した。
今回の量刑はスパイ活動に関わったとして判決を受けたほかの邦人と比べて軽いと指摘されている。対日関係を安定化させたい習近平指導部の意向も働いたとみられる。