昭和初期に月刊少年誌で連載が始まり、太平洋戦争開戦直前に打ち切られた人気漫画「のらくろ」が、戦争末期に発行された日刊タブロイド紙に掲載されていたことが、九州大の永島広紀教授の調査で分かった。作者田河水泡(1899〜1989年)自身が言及せず、研究者や弟子の間でも存在が知られていなかった。
掲載されたのは、読売新聞本紙とは別にタブロイド判で44年3月〜45年3月に発行されていた「戦時版よみうり」。44年10月31日付紙面までに、少なくとも4こま漫画224本の掲載が確認された。読売新聞東京本社広報部によると、社内でも「忘れられていた」としている。
米軍のB29爆撃機による本土初の空襲が福岡県にあった4日後の44年6月20日には「B29ハスデニ叩キオトシテ丸ヤキニシテシマツタ」といった吹き出しがあるなど、戦時下の雰囲気を感じさせる内容だ。
永島教授が2020年、国内の鉱山や工場で働いた徴用工の実態を調べるため、当時の新聞記事を探っていた際、県立長野図書館で見つけた。今年6月、日本マンガ学会で報告した。