ふるさとへの便り

「小さな常連さん」

 初めに、私は岐阜の閉店した老舗といわれたバーで働き、その後、自分でお店を立ち上げたバーテンダーであり、マジシャンでもあります。開業前にいろいろな方に意見を聞き、お昼から営業するお店(カフェバー)を立ち上げ、年齢を問わず幅広い方に足を運んでいただけるお店を営んで一年になります。

 そんな私のお店に足を運んでいただける、一人の小さな常連さんのお話をしましょう。

 私が働いていた以前のお店で知り合いになったお客さま。若くして5人のお子さまを持つ奥さまです。その一番下の、保育園2年目のお子さまが初めてお店に来店された時の事です。緊張した面持ちで席に座り、私と目を合わせようとしません。初対面という訳ではありませんでしたが、恥ずかしそうにしていました。

 私が、「お好きな飲み物は何ですか?」と聞くと、「ココア」と小さな声でオーダーをしてくれました。私は、奥さまから好みを聞いていたので冗談半分で、「今度来たときは、いつものって頼むんだよ」と女の子に伝えました。

 二回目の来店時に、注文を待つと、何か言いたそうな感じでしたが普通にココアと注文したので、「いつものですね」と笑顔でオーダーを受けドリンクを提供しました。

 そして三回目。彼女が誕生日という事でのご来店で、珍しくお父さまとのご来店でした。親御さんが行きたいお店を聞いたら、当店を指名してきたそうです。そして、席に着き、いつもより緊張した顔をしていましたが、オーダーを尋ねると、「いちゅもの」とオーダーをしていただきました。

 ココアを差し出すと、おいしそうに、また、一つ大人になったのを自覚しているのか、飲み方にも気を付けていたようでした。

 後から、親御さんから聞いたお話ですが、お店に来店する為に、「いちゅもの」と言うオーダーの仕方を練習していたそうです。

 私のお店に通っていただける小さな常連さんですが、成長を見届けられるよう長く続けられるお店にと、心に想うところです。

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