飛騨びとの精神今に 写真展「細江光洋の世界展」

2018年12月06日 08:54

  • 作品展「心に残るふるさとの景色 細江光洋の世界展」の会場に展示されている手橇の実物=飛騨市古川町若宮、市美術館 
  • 特別版ポスター「和ろうそく」に見入る観光客。1962年頃にこの場所で撮影され、昭和の面影を今に伝えている=飛騨市古川町壱之町、三嶋和ろうそく店 

 岐阜県飛騨市古川町若宮の市美術館で、飛騨びとの暮らしを撮り続けた高山市の写真家、故・細江光洋氏(1920~2003年)の作品展「心に残るふるさとの景色 細江光洋の世界展」が開かれている。展示の62点は、いずれも昭和20~40年代(1940~60年代)に飛騨市、高山市、大野郡白川村で撮影されたモノクロ写真。撮影場所を地図に示した出品リスト兼専用マップを作成し、撮影場所付近に「特別版ポスター」を作成して掲示するなど、まちなかをミュージアムに見立てたユニークな試みも関心を集めている。

 同展は、改修のため休館中の県美術館が、飛騨市教育委員会と連携し、43回目の移動美術館として開催している。

 細江氏は、今日多くの人が思い描く「飛騨高山」のイメージを作った写真家だ。1955年、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されたが、登録条件を満たすには、半世紀にわたり白川郷の原風景を撮りだめた細江氏の記録が欠かせなかったとも言われている。アメリカのニューヨーク近代美術館に作品が所蔵されるなど、世界的な評価も高い。

 飛騨びとの精神土壌に与えた影響は計りしれない細江氏の写真展とあって、来館者数は1日時点で千人を超えるほど好調。作品に写っている本人やその家族が訪れるなど、反響が広がっている。

◆感想でキャプション

 作品キャプションは来場者の感想を反映させて作っており、今どきの会員制交流サイト(SNS)を想起させる。「亡き父を思い出し、胸が熱くなった」「菜洗いの側にいてカブラを食べてしかられた」など、作品について200件もの感想が寄せられ、一部は作品とともに紹介。大量の木材を乗せて雪上を搬出する様子を撮影した「手橇(ぞり)」(1960年頃、旧吉城郡河合村上ケ島)では、モチーフとなった手橇の実物を展示するなど、作品を身近に感じさせる工夫が詰まっている。

◆撮影地にポスター

 中でも、同館をメイン会場にしながら、街中や郊外に出掛けてもらおうと、細江氏が撮影した場所付近に「特別版ポスター」(B2判)を展示する試みが面白い。飛騨古川の正月の伝統行事「三寺まいり」の巨大和ろうそく作りの場面をとらえた作品(1962年頃)をはじめ、作成したのは約40種類。「和ろうそく」の特別版ポスターは、撮影場所となった飛騨市古川町壱之町の三嶋和ろうそく店に貼っているなど、掲示場所は2市1村で約20カ所に及ぶ。現在の風景と対比することで、飛騨の何が失われようとしているかを観賞者に問い掛けている。

 同館での展示は9日まで。最終日の午後2時からは、細江氏の写真について語り合う「みんなでわいわいトーク」が行われる。


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