原三溪が愛した老舗料亭「水琴亭」再出発

2018年12月24日 07:36

  • 原三溪直筆の障壁画の前で、リニューアルの構想を語る川﨑芳浩社長=岐阜市米屋町、水琴亭 
  • 岐阜市内の業者に運営が委譲される水琴亭=同市米屋町 

 岐阜市米屋町の老舗料亭「水琴亭」は今月31日をもって一時休業する。創業家に後継者がいないことから、飲食店開業のサポートなどを手掛ける市内の業者に運営を委譲。以降は同社の方針に沿って、歴史ある風情は残しつつ内装の補修などを行い、「ぎふ水琴亭」との新しい屋号で来年3月下旬のオープンを目指す。

 水琴亭は幕末の1864年創業。かつては伊奈波神社境内にあり、山清水が琴の音のように聞こえたことから名付けられた。同市柳津町出身で茶人としても知られる実業家原三溪(さんけい)(1868-1939年)がこよなく愛した。昭和初めに現在地に移転された際は、横浜市の国名勝「三溪園」の建造に当たった大工を引き連れて指揮し、園内にある紀州徳川家ゆかりの臨春閣の一部と同じ2階建ての建物が造られた。2階にはモクレン、カキツバタなどを描いた三溪直筆の障壁画がある。庭には、同園から船で運ばれてきた十三重の塔が立つ。

 また、450年以上続く鋳物メーカーのナベヤを営む岡本家(岐阜市金屋町)からも1部屋を移築。戦前戦後は県内外の政財界の重鎮らが利用し、時の首相も足を運んだ。

 新たに運営するのは、ホテルなどの厨房(ちゅうぼう)機器や食器を扱うキッチンシティーカワサキ(同市前一色)。店舗運営は初めてだが、川﨑芳浩社長(58)は同市出身で、名称に「ぎふ」と冠を付けるのは「県外にも地域をPRして活性化したいから」。庭を散策できるようにしたり、5年ほど使われていない茶室を活用したりしようと構想を練る。「年に複数回訪れてもらえるよう料理の価格帯も見直す。歴史が物語る趣を生かしたリニューアルで幅広い人に楽しんでもらいたい」と意気込んでおり、おかみ棚橋由紀子さんは「新しいコンセプトでやってもらい、次代に続けば」と期待する。

 ナベヤ会長で茶道松尾流松蔭会岐阜支部長の岡本太右衛門さん(88)は「移築されたのは大叔父が生まれた部屋と聞いている。代々、親しみを持って利用してきた。建物はしっかり残して、活用してほしい」と話している。


カテゴリ: おでかけ グルメ

関連記事