社会貢献活動受け継ぐ

2019年01月11日 14:29

  • 小川科学技術財団の助成金贈呈式で、研究者と握手する理事長の小川信也(左)=12月7日、大垣市万石、大垣フォーラムホテル 
  • 2009年から続けている「太平洋里山の森」での活動に参加した社員や家族ら=大垣市上石津町 
  • 小川宗一(中央)が寄贈した日本福祉大図書館に1967年には小川文庫が設置された 

<海原へ ぎふ財界人列伝>

太平洋工業編(8)小川科学技術財団

 科学技術の発展につながる助成活動を行う「小川科学技術財団」は、創業者の小川宗一が私財1億円を基金に、1985年に設立した。創業時からモノづくりに欠かせない技術開発に明け暮れた、宗一の思いが込められた科学技術振興による社会貢献活動で、いまも引き継がれ、助成金による支援が続く。

 「地域やお客さまらから支援いただいた感謝の気持ちと、将来の科学技術の発展のため社会的意義のある研究や活動を援助したい」との思いで設立された財団は、助成対象を県内の試験研究機関、大学、短大、専門学校、高校などにしている。

 毎年助成金を贈呈し、2018年度は12月7日に33回目の贈呈式を大垣市の大垣フォーラムホテルで開催。28件の研究に対し、総額1645万円を贈り、これまでの助成件数は累計で434件、金額は同1億7441万円にも上った。

 財団理事長の小川信也(太平洋工業社長)は、贈呈式の研究者に向けたあいさつで「自動車産業は百年に一度の技術開発が急務であり、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を使ったモノづくりも大きく変わろうとしている」と時代背景を示し、「助成を機に研究の深掘りをスピード感を持って進め、近い将来ノーベル賞候補に育っていただけるよう世界、日本、地域の成果につなげてほしい」と期待感を込めた。

 この助成金は学術研究の呼び水として活用され、助成額累計は当初の基金1億円を大きく上回った。基金の運用益を充ててきたが、低金利時代に入り運用だけではままならなくなっていた。このため宗一の「会社発展の恩返し」の考えを共有した妻日出子が太平洋工業の株式40万株、第3代社長哲也が60万株の計100万株を財団へ寄付、配当金を助成金に充て財政基盤を強固なものに確立している。

 財団理事長を務めた哲也は晩年、相談役名誉会長の時、企業活動とこうした社会貢献を行う全国の企業経営者を対象にした「渋沢栄一賞」を12年に受賞した。当時92歳。県内からの選出は初めてだった。哲也は受賞について「名誉ある賞で光栄。渋沢栄一翁を超える年齢になったが、これからも健康に留意し、皆さんのお役に立てるよう頑張りたい」と選出を喜び、社会貢献活動の継続を誓った。

 宗一はさかのぼって64年に青少年育成のために「大垣市青年の家」(1億1千万円)、日本福祉大学図書館「慈昭館」(4千万円)を寄贈している。青年の家は日本初の施設で、交通事故で亡くした長男の遺志を生かし、私財を投じた。図書館へはその後、毎年図書寄付金を続け、67年には名字を冠した「小川文庫」が設置され、学生たちの学問への意欲をかき立てている。

 科学技術振興以外にも教育、地域振興や復興支援などに取り組んでいる。環境保全では「太平洋里山の森」(大垣市上石津町)で2009年から地域と一体となった里山づくりを継続。社員と家族、地域住民らが参加し、苗木の植樹やビオトープづくりなどを行い、特に次世代の子どもたちが自然保護活動を通じて生物多様性や環境に対する意識を高める機会にしている。

 太平洋工業は、地域に密着した社会貢献活動を推進し「良き企業市民」を標ぼうする。その精神が創業から脈々と受け継がれ、根付いている。(敬称略)

【リーダーズボイス2019太平洋工業株式会社


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