グローバル展開を加速

2019年01月12日 14:24

  • タイヤ空気圧監視システム「TPMS」の量産を開始する北大垣工場でのラインオフ式で稼働スイッチを押す小川信也=2000年 
  • 太平洋工業が国内で初めて開発し、量産しているTPMSの送信機 
  • 米国で初めてプレス事業を始めたオハイオ州の子会社工場と現地社員ら=1999年 

<海原へ ぎふ財界人列伝>

太平洋工業編(9)次世代バルブ

 「世界のバルブ界をリードする」。1996年、48歳の時に5代目社長に就任した小川信也は、この思いを強く胸に刻み、当時IT時代の次世代バルブと位置付けられたタイヤ空気圧監視システム「TPMS」の開発に力を入れた。日本で初めて直接測定方式のシステム開発に成功し、2001年からトヨタ「レクサスクーペ・ソアラ」に標準装備された。

 直接式のTPMSは、タイヤ内部に装着する送信機内のセンサーでタイヤの空気圧と温度を直接測定し、その情報を無線で車体側の受信機に送って運転者に異常を知らせる。太平洋工業はバルブに付加価値のある新製品を目指し、TPMS開発は60年代にまでさかのぼる。当初は半導体を活用した圧力センサーはなく、機械式で開発。半導体式は90年代になってからで、小型圧力センサーが廉価で調達できるようになって開発を加速させた。

 脚光を浴びたのは、米国でタイヤのバーストによる自動車の横転死亡事故が多発したことに端を発した自動車の安全性に関する規制「トレッド法」の成立(2000年)。これで北米市場の乗用車、SUVなど1600万台に空気圧監視装置の装着が義務付けられ、巨大な市場が突然出現した。

 信也は「TPMSは(バルブコアの国産化に成功した)宗一も、あったらいいと必ず思ったはずの次世代バルブ」と、開発に意欲をみせ「トレッド法による装着義務付けは、事業拡大のビッグチャンス」と捉えた。

 さらに米国高速道路交通安全局は法制定当初は直接式以外も受け入れる内容だったが、間接式に厳しい法に変更したことで直接式を採用した太平洋工業にとって「これが追い風となった。TPMSの売り上げは急速に伸びていった」と、信也はバルブ界のリーダーへ確かな歩みを進めた。

 米国に次いで2012年に欧州、さらに韓国、台湾、ロシアへと法規化は世界に拡大。1億個以上の巨大市場とされる中国も19年から新型車の搭載が決まり、先行投資で14年に生産拠点を設けた中国が日本、米国の三拠点生産体制の一角を占め、日本唯一のTPMSメーカーとしてグローバルシェアの獲得に突き進む。

 太平洋工業にはバルブ事業と大きな柱のプレス・樹脂事業がある。信也は、哲也が始めたプレス・樹脂事業の基盤拡充とグローバル展開を加速させた。1999年に部品の現地調達の進展と生産拡大基調から米国にプレス拠点を設立。顧客のグローバルリンク発注に対応するため2005年には中国に拠点を設立した。

 世界的に環境負荷を低減させるため燃費規制が強化されるなか、製品の軽量化への取り組みにも力を入れた。自動車の骨格に使われるプレス製品は、従来より軽量だが剛性の高い「超ハイテン材」の採用が急速に進んでいる。太平洋工業は材料の鋼板をそのままの状態でプレスする「冷間プレス」と、900度まで加熱し成形しながら急冷して強度を得る「ホットスタンプ」を併用。アルミ加工技術に強みがあり、国内は大垣、九州の工場で導入。海外は米国、中国、タイ、台湾の工場に大型設備を導入し、拡充を進めた。

 樹脂ではフィルム加工によるメッキレスキャップなどを生産する。信也は「お客さまの近くで生産することを信条として拠点展開した」と、経営判断の根拠を示す。これで海外拠点はプレス、バルブ事業合わせて、社長就任時の4社から2018年時点で16社まで増やした。(敬称略)

【リーダーズボイス2019太平洋工業株式会社


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