グローカルな百年企業へ

2019年01月15日 14:24

  • 「百年企業」達成に向け、戦略的M&Aの布石を打ち、将来の経営を語る小川信也=11月2日、大垣市久徳町、太平洋工業本社 
  • 8月31日付で買収した「シュレーダー」ブランドの製品を生産するフランスの子会社 

<海原へ ぎふ財界人列伝>

太平洋工業編(12)エピローグ

 太平洋工業は今年8月、米国とフランスで自動車や産業機械用バルブを生産するライバルの「シュレーダー社」の事業取得に成功した。シュレーダーを戦略的M&A(企業の合併・買収)で子会社化し、傘下に収めたことで、太平洋工業は世界のトップシェアを誇るメーカーとなり、目指す「百年企業」に向けての大きな布石とした。

 シュレーダー社は1844年、米国で真ちゅう部品製造、販売会社として生まれた。90年にタイヤバルブ事業へ参入し、海外でのシェアを拡大してきた。技術開発力、ブランド力が高いことから、自動車部品メーカーやファンドに転売されてきた歴史があり、2014年にはセンサータ社に買収されていた。

 欧米市場で強みを発揮するシュレーダーブランド、日本とアジアを中心にブランドを確立するパシフィック。信也はM&Aが成功すれば、日本、アジア、北米、欧州に生産、販売拠点が構築でき、世界四極体制の実現を描いた。

 センサータ社からM&Aの提案があったのは2017年夏。双方が法律事務所、公認会計事務所といったコンサルタントのチームを組み、1年がかりで交渉を進めた。「企業風土が違う外国人経営の会社を経営できるだろうでなく、できる」と確信するまで、論議を尽くした取締役会は20回を超えた。米国とフランスのグループ3社の全株式取得額とアドバイザリー費用を合わせた買収関連費は約200億円に上った。

 パシフィックとシュレーダーの世界シェアは、バルブコア、タイヤバルブともに二十数%ずつで、切磋琢磨し合うライバル。買収に伴いシェアはほぼ50%になり、信也は「業界のリーダーシップを取ることで企業価値が高まる」とし、「万が一、他の競合企業に買収されては、今後の事業戦略に大きな影響があったから」と胸のうちを明かす。

 他にも因縁がある。シュレーダーは、創業者の宗一がバルブコアの国産化を目指し、手探りで製品づくりをしていた時の憧れのブランド。信也はM&A成功のビッグニュースに「祖父(宗一)や父(哲也)も大変喜んでくれたと思う」と話す。

 太平洋工業は創業80周年を機にグローバル(世界)を舞台にローカル(地域)の発展に貢献する長期ビジョン「パシフィック・グローカル・ビジョン2020」を策定し、2030年の創業100周年への一里塚に位置づけている。

 その具体的アクションプランとして中期経営計画「オーシャン-20」を定め、トップクラスのグローカルな部品メーカーを目指す。シュレーダー買収は、その実現へ大きく前進するものだった。売上高も増えて計画を見直し、2020年度の連結売上高目標を策定時の1400億円から1550億円に上方修正した。陣頭指揮を執る信也は「かかった費用の200億円は買収のシナジー効果を含め、大きく伸びるチャンスの投資だ」と分析する。

 信也が考える「百年企業」。「創業100周年は節目だが、その1年だけ」。発展し続けて100年、さらにその先も続く企業を目指し、プレスとバルブの両輪で「百年企業へとつながっていく」。経営理念に「オープンでクリエイティブな経営」を掲げ、その一端に「ものづくりは人づくり」の信念のもと、人を財(たから)として「人財」育成を要とする。(敬称略)=おわり=

【リーダーズボイス2019太平洋工業株式会社


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