ネコがまたぐと死者生き返る!?言い伝え検証

2019年02月10日 07:32

昔はネズミ退治の目的で飼われていたネコ。今では愛玩の対象だ=高山市初田町、「猫カフェ・NINE」

昔はネズミ退治の目的で飼われていたネコ。今では愛玩の対象だ=高山市初田町、「猫カフェ・NINE」

 「ネコが死者をまたぐとムネンコが乗り移り、死人が踊り出す」―。岐阜県高山市丹生川町にこんな言い伝えがあるとの情報をインターネットで見つけ、伝承が残っているのか調べてみた。

 オンライン百科事典ウィキペディアのネコの文化の項目に「美濃国大野郡の丹生川村(現・岐阜県高山市丹生川町)では、ネコが死者をまたぐと『ムネンコ』が乗り移り、死人が踊り出すと言われ、ネコを避けるために死者の枕元に刃物を置く、葬式のときにはネコを人に預ける、蔵に閉じ込める、といった風習があった。今日もなお、この言い伝えは廃れていない」とある。

 丹生川町の知り合いに聞いてみると「聞いたことがない」との返答だった。

 市図書館丹生川分館で「飛騨の諺(ことわざ)」(岩島周一著)という本をめくると、「俗信・禁忌」の章に言い伝えを示すような記述を発見。「死人の上を猫が飛ぶと死人が生き返る(旧丹生川村)」、また「死人の上を猫が飛ぶと死体に魔がさす(旧上宝村)」とも。似たような言い伝えが旧高山市、旧荘川村、旧宮川村、旧清見村にもあると出ていた。

 言い伝えの存在は確認できたが「今も廃れていない」のか。高山市史編纂(へんさん)専門員の田中彰さん(67)の協力で、丹生川町の80歳前後のお年寄り複数にも問い合わせたが「知らない」という。

 言い伝えが、はるか昔に廃れた可能性が出てきたところで、新たな証言が得られた。同町の本山秀治さん(53)は1975(昭和50)年ごろ、祖母から「死者にネコを近付けるな」と言われたことを覚えていた。さらに本山さんの親戚によると、55年ごろには、亡くなった人にネコを近付けないための「見張り」を置く風習が残っていたという。

 だが、知っている人は少ないことが分かった。

 なお残る疑問、「ムネンコ」とは何か。こちらは「飛騨の方言」(岩島周一著)に記されており「ムネンコ 執念。怨念。恨みを残して成仏できない魂」と判明。ただし今回、ネコとムネンコを関連付ける言い伝えは確認できなかった。

 田中さんは「昔はネズミ退治の目的でどこの家もネコを飼っていたし、自宅で葬式をするのが当たり前だった。ネコと葬式が結び付きやすい状況にあったが、今は違う」と、時代の変化に伴って言い伝えが徐々に廃れたとの見方を示した。

 その上で「死者の枕元に刃物を置く風習は飛騨に残っている。魂を現世に残さない、または魔を寄せ付けないとの意味合い。ネコの言い伝えにも、亡くなった人に成仏してほしいという願いが根底にあるのでは」と推し量った。


カテゴリ: 社会