幸福感得るヒントに 映画「シンプル・ギフト」篠田伸二監督インタビュー

2019年03月19日 10:49

  • インタビューに答える篠田伸二監督=岐阜新聞社東京支社 
  • ドキュメンタリー映画「シンプル・ギフト~はじまりの歌声~」の一場面 

 エイズで親を亡くしたアフリカの子どもたちと東日本大震災で家族を失った子どもたちが、米国ブロードウェーの舞台に挑戦する実話を追ったドキュメンタリー映画「シンプル・ギフト~はじまりの歌声~」。悲しみを乗り越え、一歩ずつ成長していく子どもたちの姿を、生き生きと表現している。本作で初監督を務めた篠田伸二さんが岐阜新聞社のインタビューに応じ、作品に込めた思いを語った。

 -この映画を撮るに至った経緯は。

 「国内外の遺児を支援する『あしなが育英会』の創始者・玉井義臣さんは、アフリカ・ウガンダで私設学校を運営しています。サハラ砂漠以南の49カ国は「サブサハラ」と呼ばれる世界最貧地域。貧困は教育の欠如から生まれ、小説「あしながおじさん」の誕生100年に合わせて何かできないかを考えていました。ブロードウェーの舞台は、世界中から教育支援を得るためにアピールする手段だったのです。

 そんな時、2011年3月11日に東日本大震災が起きました。玉井さんは、「レ・ミゼラブル」などの舞台で知られる世界的な舞台演出家ジョン・ケアードさんと舞台「あしながおじさん」が縁で出会い、ウガンダの子どもたちと東北の子どもたちをブロードウェーに導いてほしいと頼み、プロジェクトがスタートしました」

 -撮影を通じて感じたことは。

 「撮影は4年間に及びましたが、子どもたちの成長をどこで感じていたかというと、それは言葉です。撮影当初、子どもたちは、自分の思いすら言葉にできませんでした。それが、成長の過程で言葉を獲得し、思いを表現できるようになっていきました。

 あるウガンダの子どもは、初めて日本に来て、街の美しさに衝撃を受けていました。そして、『将来、リーダーになって自分の町をきれいにするプロジェクトに関わりたい』と。すごく貧しい日々の暮らしの中で、教育を受けることで希望を獲得していったように感じます」

 -篠田監督にとって初監督作品となった。

 「玉井さんは、『支援につなげる前に関心を持ってもらわないといけない』と言われていました。それが映像の役割だと感じます。関心のタッチポイントになれるかが、当初からの目標でした。

 もともとテレビでドキュメンタリー番組を制作していましたが、映画とは全く違います。テレビは、映像の中に情報を詰め込み、作りさえすれば放送されます。しかし映画は、どんな作品でも販路がなくては観客にメッセージすら伝えることができません」

 -子どもたちの成長を丹念に描き、密度の濃い映画だった。

 「映画は90分。情緒的な部分は伝えられたが、細かい部分を伝えきれていません。だから、劇場に来る人全員にパンフレットを配るようにしています。それを読んでいただき、子どもたちの背景やプロジェクトの目指すところを少しでも理解してもらえたらとの思いです」

 -篠田監督のご両親は郡上市出身、妻で女優の紺野美沙子さんは県図書館名誉館長と、岐阜県に縁がある。30日からの岐阜市での上映に向けてメッセージを。

 「『シンプル・ギフト』という言葉は、日本人にあまり耳慣れない言葉です。しかし、映画の心棒のようなものを見つけないといけないと考え、戻って来たのがこの言葉でした。

 東北の被災者の方が異口同音に口をそろえ、家族との当たり前の日常が本当に尊いものだったとおっしゃっていました。ウガンダの子どもの保護者たちも同じようなことを言っていました。今、日本では衣食住が足りているのにもかかわらず、幸福感を感じられずにいる人たちがいます。それを打開するためのヒントになるのではないでしょうか。

 映画の中で『自分の居場所を見つけること、それが天からの贈り物』という言葉があります。自分にとっての幸せとは何か、自分にとってのシンプル・ギフトとは何かを考えてもらえればと思います」

 【しのだ・しんじ】 1961年生まれ。愛知県出身。上智大外国語学部卒。1983年から1年間、あしなが育英会の創始者・玉井義臣さんが推進した留学制度を利用し、ブラジル・サンパウロで働き、その後もあしなが運動に関わってきた。1985年TBSに入社し、ディレクター、プロデューサーとして報道、ドキュメンタリー番組を制作。現在は独立し、「シンプル・ギフト~はじまりの歌声~」は初の長編映画作品。

◆30日、紺野美沙子さんとトークショー

 ドキュメンタリー映画「シンプル・ギフト~はじまりの歌声~」は30日~4月12日、岐阜市日ノ出町の岐阜シネックスで上映。30日は午後0時30分から上映、同2時5分から篠田伸二監督と、日本語版ナレーターを務める女優の紺野美沙子さんによるトークショーが開かれる。入場料は大人1500円、大学生1300円、小中高校生800円、シニア900円(いずれも税込み)。定員190人。岐阜新聞社とシネックスの共同企画「岐阜新聞映画部」主催。キリンビール、大和証券協賛。当日20歳以上の来場者には、キリンビールから新ジャンル「本麒麟(ほんきりん)」が配られる。問い合わせはシネックス、電話058(264)7151。


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