川端康成、選評に愛 3編発見、岐阜市で展示へ

2019年03月25日 07:24

川端康成の選後評が掲載されたページを開く金森範子さん=岐阜市宇佐、県図書館

川端康成の選後評が掲載されたページを開く金森範子さん=岐阜市宇佐、県図書館

 日本人で初めてノーベル文学賞を受賞した小説家川端康成(1899~1972年)の全集未収録の選評3編が川端康成学会員の金森範子さん(81)=岐阜市=の調査で見つかった。市歴史博物館(同市大宮町)で4月5日に開幕する川端の生誕120年を記念する特別展「川端康成と東山魁夷 美と文学の森」(実行委員会主催、5月26日まで)で一部資料が展示される。

 3編は、いずれも川端が審査員を務めた新潮社文学賞の選後評。同賞は1949年に公募形式で呼びかけられ、第1回(50年)、第2回(51年)、第3回(53年)の全3回で終了した。54年創設の同名の文学賞とは別物。

 第1回の選後評は50年発行の「小説新潮」6月号、第2、3回はいずれも「新潮十月特大号」で51年と53年に掲載されていた。

 川端文学研究者で芥川賞候補にもなった岐阜市の作家島秋夫氏(本名・福井浄輔、1905~1990年)の作品「地の人」が同賞第2回で佳作に入選していたことを確かめようと、金森さんが昨年4月、県図書館(同市宇佐)に所蔵されている掲載誌の現物を調べたところ、受賞作の決定発表の記事の中に川端の選後評を見つけた。

 第2回では川端ら計3人が審査員で、真殿皎の「鬼道」を選出。選後評で川端は、受賞作に対し「なんのために書かうとしたのか、なにを書かうとしたのか、今日の私たちはこの作品のやうでは満足しかねるのだ。作者の主題、作中人物の心理、姿態、物語の展開など、すべてが或(あ)るところでとどまつて、陳列品のやうな外観である」と鋭く評している。

 第3回では川端ら計6人が審査員で、坂口䙥子の「蕃地」を選出。川端は選後評で「この作品を得たことは、戦後の新潮社『文学賞』に初めての成功であると思つた。材料も主題もおもしろい。しかし、新しい境地をひらいたとは言へないだらうが、戦後に女流作家はほとんど出てゐないのだから、その点からも興味が持てる」と見解を述べている。

 川端康成文学館(大阪府茨木市)の高橋照美館長は「2016年に発刊された勉誠出版の『川端康成詳細年譜』でもこの選後評はもれている。この頃は代表作『千羽鶴』を発表し、有名になってきた時期。選後評でも新人の女性作家を評価しようとしており、新人発掘に熱心だった川端を裏付ける資料」と解説する。

 金森さんは「言論統制の時代から解放されたからこそ、もっと腰を据えて書けよ、と書き手を鼓舞しているように感じる。心を込めて書かれた選評で見つけた時はうれしかった」と話している。


カテゴリ: くらし・文化