「赤羽刀」関市に託す GHQ返還品、譲渡最多

2019年06月16日 07:38

  • 関市が所有している赤羽刀。まだ修復作業前のため、ところどころにさびがある=関市桜本町、市文化会館 
  • 募金で修復された赤羽刀(脇差し)=同市小屋名、県博物館 

 戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が没収し、後に全国の自治体や博物館などに譲渡された日本刀「赤羽刀(あかばねとう)」。合計3209本に上るが、文化庁によると、譲渡先の中で岐阜県関市が全国最多の480本を所有している。岐阜県(県博物館)も168本を所有し、両者の合計は全国でも突出している。市内には刀作りの各工程の職人がそろい、修復作業が可能なためだ。刀剣ブームが続く中、関市は修復した赤羽刀を市内外で展示し、刀の産地であるとともに修復能力も高い「刀都」の名をPRしていく。

 赤羽刀はGHQが日本に返還した後、展示・公開を目的として全国の自治体や博物館に1999年に譲渡された。関市に譲渡された赤羽刀は大部分が美濃(県内)産だが、県外で作られた刀も含まれる。多くは室町~江戸時代に作られた。

 関市に全国最多の赤羽刀が譲渡されたことは、刀都にとって面目躍如だ。職人や日本刀愛好者らでつくる関伝日本刀鍛錬技術保存会の井戸誠嗣相談役は「日本刀本体を作る刀匠が多数いる自治体は他にもあるが、関には刀匠以外の工程の職人がそろっており、日本刀作りの作業を一貫して行える環境がある」と理由を語る。

 保存会には、刀身を研ぐ研師、刀身以外の金属部分の加工を施す白銀(しろがね)師、鞘を作る鞘師といった日本刀作りのさまざまな工程を担う職人24人が所属しており、市内で修復作業を完結できる。譲渡された段階の赤羽刀は、保存処理がなされているとはいえ、かなりのさびが付き、公開して鑑賞できる状態ではない。刀職人らの手により、市は昨年度までに約140本を修復。本年度も6本を修復する方針だ。市によると、修復本数も全国最多という。

 また、修復作業を担うことで、技術の維持や上達につながる利点もある。関の職人は県外からの赤羽刀の修復依頼も受けている。今後、修復が済んだ赤羽刀は市内だけでなく、市外にも展示用に貸し出す方針。市の担当者は「関の刀自体と、製造や修復技術の双方を知ってもらえる」と意義を強調する。

 一方、県博物館(関市小屋名)は昨年度までに赤羽刀を合計39本、特に昨年度だけで10本を修復した。うち1本(脇差し)は美濃の刀工の作。修復には、県博物館が昨年開いた赤羽刀の展示会の際に募った寄付金約20万円を充てた。修復を担ったのも関の職人だった。県博物館の長屋幸二さんは「関に職人がそろっている点が、収蔵品の修復にとってもありがたい」と話す。この脇差しを23日まで公開している。本年度も10本程度の修復を行う方針だ。

 失われる可能性もあった文化遺産である赤羽刀。関の刀職人が地道に復元に努め、次代に伝えている。

 【赤羽刀】 終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が日本人の武装解除の一環として多くの刀剣類を没収した。多くは海外に流出したり廃棄されたりしたが、その他の刀剣類は東京・赤羽にあった米軍施設で保管された。美術的な価値の高い刀剣は日本に返還された。米軍施設の所在地から「赤羽刀」と呼ばれる。一部は所有者に返還され、それ以外の3209点は自治体や博物館に譲渡された。


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