魚の生息域拡大、謎解明 DHAの多さに違い

2019年06月25日 07:56

いずれもトゲウオ科のイトヨ(上)とニホンイトヨ。DHAを合成する遺伝子の数に違いがあった(北野潤国立遺伝学研究所教授提供)

いずれもトゲウオ科のイトヨ(上)とニホンイトヨ。DHAを合成する遺伝子の数に違いがあった(北野潤国立遺伝学研究所教授提供)

 国立遺伝学研究所(静岡県三島市)などの国際研究チームが、魚が海から川などへ生息域を広げるようになった理由の一つを解き明かした。約5年にわたる研究で、淡水域の魚の方が海水域の魚よりも必須脂肪酸「DHA(ドコサヘキサエン酸)」を体内で合成する遺伝子の数が多いことを突き止めた。DHAを自ら作ることで生息域を川や湖などへ広げたとみられる。米科学誌サイエンスに5月に掲載された。研究の発端は、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ(岐阜県各務原市)でのトゲウオ科のニホンイトヨの飼育方法から生まれた疑問だった。

 アクア・トトぎふでは2012年に企画展のため、国立遺伝学研究所とともに、主に海で生息するニホンイトヨを採集。展示後は各施設で繁殖させ飼育していた。13年にアクアトトぎふを訪れた研究員は、研究所のニホンイトヨは大半が死んでしまったのにアクア・トトぎふでは元気に泳ぎ回っていることに驚いた。

 「同じ場所で採集し繁殖させたのに、どこに違いがあるのか?」。アクア・トトぎふの池谷幸樹館長らは研究を開始し、約30人の国際研究チームへと発展した。

 研究では、塩分濃度や水温など両施設の飼育環境を比較し、餌に違いがあることが分かった。アクアトトぎふでは、DHAが含まれる海水魚用の餌を与えていた。海で暮らす魚は、海中のプランクトンからDHAを摂取するが、淡水の生態系にはDHAが少ない。餌にDHAが含まれていたことが、生命の維持につながったと考えられた。

 さらに、同じトゲウオ科で海と川を行き来するイトヨでは体内でDHAを作るのに必要な遺伝子の数がニホンイトヨより多いことも分かった。他の淡水の魚でもこの遺伝子の数が多く、体内でDHAを合成することで海から淡水へと進出できたと考えられるという。

 池谷館長は「偶然の出来事から大きな研究に発展し、貢献できたことをうれしく思う。今回の研究成果を今後は水族館の他の生き物でも考察していきたい」と話している。


カテゴリ: 科学