車いす目線、感じた困難 ALSの恩田さんと歩く

2019年09月03日 07:49

  • ヘルパーに車いすを押してもらい通りを進む恩田聖敬さん=岐阜市学園町 
  • 清流デッキのエレベーターに乗る恩田聖敬さん。車いすを傾けたまま乗るのは難しく、ヘルパーが同乗するとより窮屈になる=同 

 全身の筋肉が動かなくなる国指定の難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」。その当事者が7月の参院選で初当選し国会議事堂のバリアフリー化が話題になる中、まちにどのような課題があるのかを知るため、サッカーJ2・FC岐阜の元社長でALS患者の恩田聖敬(さとし)さん(41)=岐阜市=と通りを歩いた。エレベーターの狭さや歩道の凹凸など、大型の電動車いすを使う当事者にとっての困難が見えた。

 恩田さんは2014年5月にALSと診断を受けた。FC岐阜社長就任から1カ月後のことだった。15年1月に公表し、その年限りで退任した。病状は進行し、体中が動かせなくなっている。

 24時間体制で恩田さんのケアに当たる介護福祉士の米津アトムさん(36)らと向かったのは、同市の岐阜メモリアルセンターとぎふ清流文化プラザの2階部分を約200メートルの通路でつなぐ連絡橋「清流デッキ」。両端に各1基あるエレベーターで通路へ上る。

 エレベーターは窮屈だった。リクライニングを起こさないと車いすは入りきらないが、首が前に倒れてしまうため頭部を固定して乗る。「むせにつながり、なるべく取りたくない体勢。長い時間はできない」と米津さん。気管切開をしているため、上半身が垂直だと管が喉に当たりっ放しの状態になって苦しいという。

 県によると、このエレベーターは間口が1・4メートル、奥行きが1・35メートル。国がバリアフリー法で定める基準に沿うが、恩田さんは「余裕を持って乗れる広さのものは総合病院ぐらい」と指摘する。もし乗っている時に故障などの事態に遭遇したら、と不安がよぎった。

 障害者の利便性向上を狙いに設置されたこともあってデッキの路面は段差がなく、快適に通行できる。ただ、施設周辺は側溝の穴や部分的な舗装の崩れなど、細かい段差や傾斜がある。

 記者も車いすを押させてもらった。両腕に力が入った。聞けば、車いす単体で重さ約40キロ。人工呼吸器や痰の吸引器、それらを動かすためのバッテリーを積み、恩田さんが載って100キロ近くになるという。車いすを押していると恩田さんの顔が見えず、異状があった場合に気付けるよう外出時にはもう1人、前を歩く人が必須だと感じた。

 「ALSになるまでは障害者の事情を理解できていなかった」と振り返る恩田さん。トイレが奥まった場所に配置されていたり、多機能電動ベッドが欠かせないために宿泊を伴う外出先が限られたりと、ハード面での困り事は少なくない。

 ただ「全ての設備をマイノリティーに合わせてほしいとは思わない」という。それよりも「重度の身体障害者が同じ施設を使い、同じ道を通る可能性があることを知っておいてほしい」と強調する。「大切なのは心のバリアフリーでは。障害者だからといって構えず、分け隔てなく接することから始まると思う」と伝えた。

 【筋萎縮性側索硬化症(ALS)】 運動神経細胞に障害が生じ、思考能力が保たれたまま筋肉が萎縮する神経疾患で、治療法は見つかっていない。厚生労働省によると、ALS患者(特定医療費受給者証所持者)は2017年末時点で全国に9636人いて、岐阜県内には134人がいる。


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