発生1年、豚コレラ拡大の一途 県内養豚場の半数感染

2019年09月08日 08:10

国内で26年ぶりに豚コレラが発生した1例目の養豚場=昨年9月10日、岐阜市内

国内で26年ぶりに豚コレラが発生した1例目の養豚場=昨年9月10日、岐阜市内

 岐阜市の養豚場で国内26年ぶりとなる家畜伝染病「豚(とん)コレラ」が確認されてから、9日で1年となる。岐阜県など7府県の養豚施設で感染が確認され、防疫のために殺処分された豚は13万頭を超える。媒介するとされる野生イノシシの感染も広がり続け、終息のめどは全く立っていない。

 県内では、民間養豚場の半数に当たる19施設で豚コレラが確認され、50%を超える6万頭以上が殺処分された。県が開発したオリジナルのブランド豚「ボーノポーク」も多くの種豚が失われた。県畜産研究所など公的施設の感染も相次ぎ、防疫の難しさを浮き彫りにした。

 農林水産省や県は養豚場と協力し、ソフト、ハードの両面から衛生水準を高める努力を続けているが、今月5日にも中津川市の養豚場で発生するなど、歯止めがかかっていないのが実態だ。

 農水省はウイルスを解析し、中国または周辺国から感染した豚肉や加工品が持ち込まれたとみる。汚染肉のごみを食べた野生イノシシがまず感染し、飼育豚に広がった可能性が高いとの見方だ。

 感染した野生イノシシは7県で千頭以上が確認された。農水省は今月、関係省庁や関係県と連携し、感染イノシシの拡散を防ぐため、岐阜県や愛知県で実施している経口ワクチン散布の範囲を拡大する方針を示した。ただ、ワクチンが十分な効果を示すには1年以上かかるとされ、対策の長期化は必至だ。

 養豚農家からは、豚へのワクチン接種を求める声が上がる。ワクチンを使うと、国際獣疫事務局(OIE)から「非清浄国」とされ、豚肉や加工品の輸出入に大きな影響を及ぼす恐れがある。農水省は接種の検討を始めたが、否定的な姿勢は崩していない。

 古田肇知事は豚コレラ対策について「国の危機管理の問題」とし、ワクチン接種について広域的な対応方針を示すよう国に求めている。

◆感染イノシシ、関東到達へ 専門家予測「年度内にも」

 感染拡大が続く豚コレラ。長期化した原因の一つとされるのが、野生イノシシによるウイルスの拡散だ。農林水産省は5日、感染イノシシが発見された地域の外側で帯状に経口ワクチンを散布する「ワクチンベルト」の構築を打ち出した。専門家の中には、感染イノシシが年度内に群馬県まで到達するとの見方もあり、迅速で実効性の高い対策が求められている。

 イノシシの拡散予測図を作成したのは、県豚コレラ有識者会議や農水省拡大豚コレラ疫学調査チームに名を連ねる獣医師の伊藤貢さん(59)=愛知県田原市=。全ての感染イノシシの発見場所や時期を調べ、最初に見つかった岐阜市の養豚場を基点に、直線距離で1日に何㍍移動しているかを分析してきた。

 その結果、伊藤さんは野生イノシシの感染が1日に最速で330メートル広がると予測。このペースで拡散が進めば、早ければ来年3月に全国有数の養豚県である群馬県など関東に広がる恐れがあるとみる。

 農水省は陽性イノシシの発見場所を挟むように、東日本(富山、長野、静岡など)と西日本(福井、滋賀、三重)に、餌型の経口ワクチンを帯状に散布する計画を示した。すでに散布している県に加え、静岡県や滋賀県でも9月下旬から開始する。

 餌型ワクチンは他の動物が食べたり、1頭のイノシシが複数食べたりするため、ワクチンの効果が広がるには時間がかかる。伊藤さんは「1年後のウイルスの拡散地域を予測した散布が必要。またワクチンだけでなく、個体数の削減や移動の制限など、複数の対策を並行して行う必要がある」と話している。


カテゴリ: 社会