田舎暮らしで「脱・お金」ライフはどう?

2019年10月02日 12:10

揖斐川町が0円で提供する町有地。町内に移住定住する50歳以下の人が対象で、1年以内に住宅を建てて10年間住むことが条件だが、支出を抑えるメリットがある=揖斐郡揖斐川町市場

揖斐川町が0円で提供する町有地。町内に移住定住する50歳以下の人が対象で、1年以内に住宅を建てて10年間住むことが条件だが、支出を抑えるメリットがある=揖斐郡揖斐川町市場

 老後に必要な資金は公的年金以外に2千万円か、3千万円か-。少子高齢化で将来的に受給額の減少が予想される公的年金。老後に向けて現役世代の不安は募るばかりだが、これまでの"お金"が最優先される生活から脱却し、岐阜県などの「地方」を舞台に独自のライフスタイルを追求することも、老後を安心して暮らす工夫の一つかもしれない。

 そもそも公的年金はどのくらいもらえるのか。厚生労働省年金局の2017年度統計によると、県内の年金受給者の月額平均は同年度末時点で厚生年金14万5226円、国民年金5万7488円。国民年金は満額でも月額にして6万5千円ほど。これが現状だ。

 岐阜市に住む70代の元会社員男性は60歳で定年退職し、再就職せずに年金の範囲内で生活している。未婚で1人暮らし。厚生年金が月額にして15万円弱支給され「収支はとんとん。年金だけで生活できないことはない」と話す。ただ、住まいは持ち家で、家賃分の支出がない。健康を維持していることも支出を抑える要因になっている。退職金の1千万円は万が一に備えて手をつけていない。

 現役時代に職を転々とした同市の60代無職男性の年金は月額にして3万円。会社勤めをした10年間に払った厚生年金だけが支給されている。国民年金は「年金なんてもらえないと思って払わなかった」。だが、月3万円の生活は厳しく生活保護を申請。生活保護費の7万円を合わせた10万円で毎月をやりくりする。「過去に戻れるなら貯金をしたい」と悔やむ。将来的に年金受給額が減っていくと考えれば人ごとではない。

     ◇

 老後に使えるお金を増やすには現役時代に収入を増やすか支出を抑えるか、老後も健康を維持して働き続けるか。若い世代の中にはお金の掛からない田舎暮らしを選ぶ人もいる。「田舎は物価が安いし、今はITも物流も発達しているので生活に困ることはない」と話すのは、中津川市坂下の女性(35)。

 県外で働いていたが、結婚と子育てを機に古里の中津川にUターンした。古民家を改修して住み、地域で助け合って暮らしているため、近所の人たちから農作物やイノシシの肉、鮎などのお裾分けも届く。

 自宅でゲストハウスを営んだり、地域の空き家を再生して都会から移住してくる人に紹介したりして生計を立て、欧米諸国の人のように年に一度、家族との長期旅行を楽しむ。

 「今は仕事というより趣味のような感覚。現役と老後という区別はない」。年を取ってもこの生活を続けていくつもりだ。

 田舎暮らしを選ぶ若者たちへの支援は手厚い。県内の自治体でも宅地の無償譲渡、住宅の購入やリフォーム、引っ越し、通勤の費用補助をはじめ、コメの提供といった移住者を呼び込む施策を競うように展開している。こうした自治体が提供する支援策を上手に活用するだけでも、支出は大きく抑えられそうだ。

 宅地の無償譲渡は揖斐郡揖斐川町の取り組み。1年以内に住宅を建て、10年間住んでくれる50歳以下の人に町有地を0円で提供している。町職員は「土地を購入する費用が掛からない点がメリット」と強調する。

     ◇

 家庭経済に詳しい岐阜大教育学部の大藪千穂教授は「老後の生活を全て国が面倒を見るのはもともと難しい。今の若い人たちは年金が減る可能性があるから残りは自助努力だと理解している」とした上で、これまで当たり前だと思っていた人生設計の常識を見直す必要性を説く。

 特に、住居費の見直しは大きく支出を減らす効果があるといい、「住む所は東京でなくても新築でなくてもいい。みんなが同じ方向を向く必要はない。子どもが巣立つと部屋が余るので子どもがいる間は賃貸に住み、定年退職前に老後のすみかとして間取りの少ない住宅を1千万円くらいで買う方が安い」と話す。さらに「高齢になって1人で寂しい場合は、元気な高齢者みんなで一緒に暮らすのも楽しいかも」とシェアハウスも勧める。


カテゴリ: くらし・文化 政治・行政 社会 経済