岐阜で腕磨いた味の外交官 在豪日本大使館料理人に

2019年11月14日 08:17

「後悔することのないようにしたい」と語る高見直樹さんと愛子さん=オーストラリア・キャンベラ、日本大使館

「後悔することのないようにしたい」と語る高見直樹さんと愛子さん=オーストラリア・キャンベラ、日本大使館

 岐阜市内で夜に1日1組のみの客をもてなす日本料理店を営んでいた高見直樹さん(46)が今年1月から、南に約8千キロ以上離れた在オーストラリア日本大使館で公邸料理人として腕を振るっている。「味の外交官」とも呼ばれる重要な役目に手を挙げ、妻の愛子さん(46)と新天地に向かった。料理を通じ、岐阜や日本との橋渡し役を担っている。

一期一会のコース料理

 高見さんは板前の父から料理の世界を見聞きし、自然と父の背中を追いかけていた。中学を卒業後、大阪市内の老舗割烹(かっぽう)で修行。独立を目指して精肉店などを展開していた企業で肉の割烹も学び、2013年3月、愛子さんの故郷の岐阜市内に店を構えた。全国各地や国外に出かけ、その土地と岐阜の素材を融合させた「一期一会のコース料理」を振る舞う出張料理も手がけたかった高見さん。交通の便がよく、自然豊かで土が肥え、農産物の品質が申し分ないとして岐阜の地を選んだ。

 「捨てるところは一つもない」という教えを忘れず、野菜の皮や魚の骨も仕込みに用い、食材を全て使い切る調理を徹底する。政財界の要人や企業経営者、歌舞伎役者や芸能関係者と幅広い人たちから愛される店になった。

妻の一言が後押し

 漁師町を主に巡った出張料理に海外での依頼が舞い込み始めた頃、修業時代の先輩から料理の幅を広げられると公邸料理人の募集を紹介された。店の経営が軌道に乗った時期で悩んだ。高見さんの挑戦したい気持ちを見抜くかのように愛子さんが放った「行った方がいい」の一言が背中を押した。

 多いときには週4回、高橋礼一郎大使が要人を招くパーティーのほか、大使夫妻の食事も担当する。「伝統的な日本料理に努めつつ、豪州に根付く、先住民のアボリジニの食文化などを学びながら料理に取り入れている」。豪州の素材を初めて使う際は、できる限り生産者に会い、話を聞いてからメニューを考えている。

 「おいしいと言ってもらえることが一番うれしい」と高見さん。一流の料理に慣れ親しんだ要人に「シェフがどのような人生を歩んできたか分かるようだ」と賛辞を贈られたことが愛子さんの胸に刻まれている。

 大使の任期の間、公邸料理人を務める。「後悔することなく、料理で大使に精いっぱい仕えたい」と語る。

【記者のひとこと】

 高見直樹さんは出張料理で岐阜の素材を県外に、持ち帰った県外の珍しい素材を岐阜の人たちに料理で提供することを「地産地消の循環」と呼んでいる。出張料理に出かける自身を「地産地消を料理で伝えるスポークスマン」と表現したのは、その役割の一端を担っているという責任感と自負の表れなのだろう。

 今はオーストラリアに日本の素材や味、料理の歴史的な背景を紹介している。帰国後、どのような海を越えた「地産地消の循環」を生み出すのか楽しみだ。


カテゴリ: グルメ 社会