大嘗祭に笏(しゃく)上納 飛騨一宮水無神社

2019年11月16日 09:00

上納された笏と同形の笏を持つ牛丸大吾宮司=10月25日、高山市一之宮町、飛騨一宮水無神社

上納された笏と同形の笏を持つ牛丸大吾宮司=10月25日、高山市一之宮町、飛騨一宮水無神社

 天皇即位に関する一連の儀式のため宮内庁に上納された、公家が正装時に右手に持つ「笏(しゃく)」は、岐阜県高山市一之宮町の位山(くらいやま)で切り出したイチイから作られた。地元では古くから、即位などに絡んで朝廷へ位山のイチイで作った笏を納めてきた。上納を取り仕切った飛騨一宮水無神社(同市一之宮町)の牛丸大吾宮司(59)らは「大変な名誉。伝統をつないでいきたい」と喜んでいる。

 イチイは別名アララギで、位山に原生林が広がる。昔、この木で作った笏を朝廷に献上したところ、一位という最高の位を受けたことから、木をイチイ、山を位山と呼ぶようになったといわれる。古くは1159(平治元)年、朝廷に笏を献上した記録が残る。近代以降は明治、大正、昭和、平成と代々の即位に際して納めた。

 笏の製作には、地元の宮大工小野(この)庄一郎さん(66)が当たった。平成の即位で笏の製作を担った職人が亡くなっていたため、腕を見込まれ任された。2017年秋に位山から切り出された樹齢約300年のイチイ3本を製材。1年ほど乾燥させ、ねじれたり曲がったりしていない材を選別した。今年2月に飛騨一宮水無神社で仕上げをし、宮内庁から依頼のあった本数を完成させた。3月末に牛丸宮司が納めた。

 笏は位山のイチイを使って代々納められてきたが、作り方の資料は残っておらず手本となる人もいなかったため、小野さんは一から製作に当たった。板の上辺は幅を広く厚く、下辺は幅を狭く薄くして、さらに独特の丸みをもたせるため造作が難しい。のみや丸かんなを駆使して仕上げた。最後の保護つや出しには、手触りを良くするため油でなく米ぬかを使用。同神社の氏子総代らが米ぬかの入った袋で磨き上げた。補佐に入った宮大工で長男の大介さん(32)に、後世のため製作工程を書き残させた。

 小野さんは「普通ではできない経験だった。光栄です」と歴史的事業に関わることができた幸運に感謝している。


カテゴリ: くらし・文化