豚殺処分で生産・流通に痛手 ワクチン接種1カ月

2019年11月28日 08:01

経営を再開した農場のブランド豚「瑞浪ボーノポーク」が並ぶ農産品直売所。ファンは多く、週末になると県外から買いに来る客もいるという=27日午後、瑞浪市土岐町、きなぁた瑞浪

経営を再開した農場のブランド豚「瑞浪ボーノポーク」が並ぶ農産品直売所。ファンは多く、週末になると県外から買いに来る客もいるという=27日午後、瑞浪市土岐町、きなぁた瑞浪

 豚(とん)コレラ(CSF)の予防的ワクチンの初回接種から1カ月が経過した。感染拡大におびえてきた養豚農家からは安堵(あんど)の声が聞かれるが、発生農家の経営再開に向けた歩みは道半ばだ。そもそも、岐阜県内の豚の約6割を殺処分で失ったことで、流通業者などを含めた業界の「ポークチェーン」が崩れた痛手は計り知れない。ワクチン接種は再生へのスタートにすぎず、国や県などによる支援は欠かせない状況となっている。

 県内では10月25日に初回の接種を始め、追加接種を含め今月27日までに約4万7千頭に接種した。接種を国に要望し続けてきた県養豚協会の吉野毅会長は「やっと枕を高くして眠れている」と安堵。初回の接種以降、県内では豚の感染は確認されていない。

 一方で、経営再開への道は険しい。県内では昨年9月以降、感染が確認された20農場で約7万頭を殺処分した。経営再開し、出荷にこぎ着けたのは瑞浪市の1農場のみ。廃業を検討していた農場で感染が確認された例もあるが、関係者によると少なくとも3農場が廃業を検討しているという。

 「ポークチェーンに深刻なダメージを残しており、一度途切れた商売を再開させるのは一筋縄ではいかない」と話すのは、全頭を殺処分で失い、経営再開に向け動き出した岐阜地域の農場社長。養豚は、種豚の導入に始まり、繁殖、肥育、出荷と多岐にわたる仕事があるが、「何をするにも問題が発生する」という。

 種豚を導入する際は、防疫のため搬入元が農場周辺に近づくのを敬遠し、豚コレラに感染したイノシシが見つかっていない県南部を豚の受け渡し場所に指定することが多いという。飼料も、運送業者が複数の農場を「はしご」して搬入しないため、少ない量の購入であっても運賃や車両消毒費が余分にかかる。

 従業員の雇用継続や地域住民との協議など、農場ごとに固有の課題もはらむ。「問題が長期化して復旧が遅れ、資金が不足していくことが一番の問題」と農場社長。導入から出荷まで、およそ1年。かさむ経費と心労が農家を悩ませる。

 そこで県は、種豚の受け渡しや飼料購入時に余分にかかる経費の補助、相談に対応するコンサルタント経費などの支援を決めた。優遇融資も国、県などで少なくとも計6種に増えて複雑になったため、県の相談窓口を一本化した。県農政部の担当者は「経営再開に向け、農家の立場に立った細かな支援を続けたい」。風評被害対策として、PR事業にも力を入れる。

 一方、と畜を担う岐阜市食肉地方卸売市場では、ピーク時は1日300頭ほどを取り扱ってきたが、現在は70~100頭前後と低水準のままだという。「ワクチン接種の効果が業界全体に及ぶのはまだまだ先」と担当者。収益は悪化しているが、「農家の皆さんが歯を食いしばって再開を目指しているので、われわれも頑張るしかない」と話す。


カテゴリ: 社会