山里に奇抜なヘビ 外来種ペット交雑の恐れ

2019年12月07日 07:50

  • 吉田忠史さんが発見し、友人と捕獲したコーンスネーク=山県市岩佐(吉田さんの友人・吉田広明さん提供) 
  • コーンスネークがいた農道沿いの側溝を指さす第一発見者の吉田忠史さん=同 
  • 中国南東部原産ハナガメと日本固有のニホンイシガメ(準絶滅危惧種)との交雑種と思われるカメ=岐阜市柳戸、岐阜大応用生物科学部動物繁殖学研究室 

 「見たことのないヘビを捕まえた。オレンジ色のしましまのヘビ。珍しいのでしょうか」-。岐阜県山県市の住民から、岐阜新聞のトクダネ取材班に情報が寄せられた。捕獲場所は、同市岩佐の山際に広がる農地沿いの道路。そんな奇抜なヘビが山県の山里にいるのだろうか。正体を調べてみると、外国産の生き物が日本の自然界に放され、生態系に影響を与える外来種問題の一面が見えてきた。野外でそうした生き物を見つけた時、どう対応すればいいのか。

 第一発見者は、近くに住む吉田忠史さん(75)=同市岩佐=。今秋のある朝、散歩中に道路脇の側溝の底をはうヘビを見つけた。「最初はひもかと思った。遠くから見ていたら動いたんで、あっ、ヘビやって驚いた」。全長約50センチ、太さ1センチ弱。奇抜な色で、毒ヘビなら放っておけないと思い、親しい友人に手助けを求めた。ヘビの頭をつかんで、空の4リットルペットボトルに押し込み、最寄りの駐在所の警察官に連絡。山県署からパトカーが駆けつけ"拾得物"として引き渡した。牙をむくこともあったが、おとなしい性格のヘビだったという。

 記者は、吉田さんらから送られた写真データを岐阜大の動物繁殖学研究室の楠田哲士准教授に見てもらった。「コーンスネーク」という米国南東部原産の外来種の可能性が高いという。1メートル20センチほどまで成長することから、これから成体になるとみられる。毒がなく性格もおとなしいため、飼いやすく、ペットショップで販売されている。ペット向けのヘビの中では最も知られた種類という。

 楠田准教授は「アパートに住んでいても、ヘビならケースの中で飼える。鳴かないし、匂いもほとんどない。爬虫(はちゅう)類は女性を中心に人気が高まっている」とした上で「コーンスネークは日本の自然界にいてはいけない」と語気を強める。飼っていたものが逃げ出したか、飼い主が放したか。危険ではないというが、地域によっては日本の冬を野外で越せる可能性があり、複数いれば繁殖するかもしれない。1匹でも日本のヘビと交雑しないとは言い切れない。「外来種問題はこうした積み重ねで深刻化する。見つけ次第、対処しなくてはいけない。飼えなくなっても、自分で飼い主を探すなどして責任を持ってもらいたい」と注意を呼び掛ける。

 コーンスネークは飼育数が多いため、逃げ出したり放されたりする確率が高いほか、色もオレンジ色に限らず、黄色などさまざまな品種がある。黒色などの地味な色だと、見過ごされている恐れもある。ヘビの正体が分かり、吉田さんは「古里の自然に悪影響を与える。逃がしたのなら、そういうことはやめてほしい」と話す。

「死なせるより...」外来種放つ 日本的思考、見え隠れ

 外国産の生き物が日本の自然界に放され、生態系に影響を与える外来種の問題はヘビに限らない。爬虫(はちゅう)類や魚類を中心に、その多くがペット由来といい、以前から知られたところではカメの問題がある。

 楠田哲士岐阜大准教授によると、もはや手に負えないほど増えた米国原産のミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)だけでなく、県内でも珍しい外来種は見つかっている。最近では、昨年11月に本巣市でマダガスカル原産のホウシャガメ、今年6月に岐阜市でアメリカ大陸原産のカミツキガメが発見された。近隣では、愛知県一宮市で9月、中国南東部原産のハナガメと日本固有のニホンイシガメ(準絶滅危惧種)との交雑種と思われるカメまで見つかり、同研究室で保護されている。

 法律上は、特定外来生物に指定されている生き物は野外に放すと罰則の対象になる。山県市で見つかったコーンスネークを含む指定外の生き物でも"遺棄"や"虐待"と見なされ、動物愛護法に触れる恐れがあるという。

 ただ、古くから日本に根づいている仏教的な価値観が問題を難しくする面もあるという。「生き物を山野池沼に放つことは生き物の殺生や肉食を戒め、供養にもなり、功徳を積めるという仏教の教えがあった。生き物を放つ『放生(ほうじょう)』は善行だった」と楠田准教授。古典落語にも、ご隠居が功徳を積もうとウナギ店のウナギやスッポンを次から次へと川に放す「後生鰻(ごしょううなぎ)」という話があり、ルールで縛るだけでは難しい文化的背景もあると考えられる。

 飼えなくなって死なせてしまうよりも自然界で生き続けてほしい、という思い-。しかし、楠田准教授は「それは無責任な自分への慰めでしかない。ペットとして飼われていた生き物が、野生では生きられない可能性があることを考えていない」と指摘する。

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 楠田准教授ら岐阜大の研究者は、外来種問題について地道に理解を広め、解決していこうと「ぎふ生物多様性情報収集ネットワーク」を発足。外来動植物の目撃、捕獲情報や写真の提供を呼び掛けている。飼い主が分からないペットの場合は、拾得物として警察署に届けることになるが、同ネットワークでも情報を募る。最終的に、その外来種を同研究室で受け入れる一元化の流れを作り、早期発見と対処につなげていきたいという。

 問い合わせは岐阜大応用生物科学部動物繁殖学研究室の楠田准教授、電話058(293)2862。

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