長良川鵜飼の短歌発見 歌人・佐佐木信綱作歌集未収録

2019年12月28日 09:03

  • 佐佐木信綱の全歌集未収録の短歌が掲載された「獅子吼」の巻頭言ページ(岐阜市立中央図書館所蔵) 
  • 「獅子吼」第75集の表紙(同) 

 近代短歌を代表する歌人佐佐木信綱(ささきのぶつな)(1872~1963年)の全歌集に未収録の短歌が見つかった。美濃地域を拠点に九州や東京に支部を持つ俳諧結社「獅子門」の機関誌「獅子吼(ししく)」の第75集(39年9月発行)の巻頭言ページに掲載された5首のうちの1首。著名な歌人、俳人によって古来から詠まれてきた岐阜の長良川鵜飼を詠んだ短歌で「うかひ舟下ることおそし夜の河原に吾手吾足蚊にくはれけり」。信綱らしく平明な歌風で実感も込められており、長良川に特別な愛着を寄せていたことを裏付けている。

 見つけたのは、本紙文化面で「新・岐阜県歌壇史」を連載中の歌人小塩卓哉さん(59)=羽島郡岐南町出身、愛知県一宮市在住=。連句と俳句の機関誌である獅子吼が11月に創刊100年を迎え、記念特集号(第967集)を発刊する際、小塩さんは過去100年間の同誌全てを調査した。第75集の巻頭言のページに掲載されていた信綱の短歌5首を見つけ、信綱自身が刊行した歌集をまとめた全歌集と照合したところ、「鵜飼」の題で3首詠まれたうちの1首が未収録だったことを突き止めた。2020年1月1日発行の獅子吼1月号(第969集)に発表する。

 信綱は生涯で何度も岐阜を訪れ、鵜飼を詠んだ短歌も残している。中でも若き日の作品に、五七調の長歌で詠んだ新体詩「長柄(ながら)川(長良川)」がある。1893年8月、22歳の信綱は長良川鵜飼を見物して帰京後、長良川の堤防が三十数カ所で決壊し約30人が死亡した水害があったことを知って心を痛めて作歌し、総合誌「国民之友」(同年9月13日発行)に発表した。水害、そして2年前の濃尾地震と相次ぐ大災害に見舞われた美濃地方を思いやっている。

 研究誌「佐佐木信綱研究」の編集長で、信綱のひ孫にあたる歌人佐佐木頼綱さん(40)=東京都=は「未収録作品はしばしば見つかるが、生涯最長の作品『長柄川』に愛着のあった信綱がなぜ歌集からこの作品を外したのか、岐阜と信綱とは縁がありながら今まで研究がされていなかった。信綱研究を見直すよい機会になる」と話した。


カテゴリ: くらし・文化