市提供の消防入団適齢者名簿 出不足金徴収に利用

2020年02月05日 07:46

火災現場での消火活動のほか、消防操法訓練や地域の夜警も消防団の重要な活動だ(本文と写真は関係ありません、コラージュ)

火災現場での消火活動のほか、消防操法訓練や地域の夜警も消防団の重要な活動だ(本文と写真は関係ありません、コラージュ)

 消防団が入団しない男性から出不足(でぶそく)金を得ている問題で、岐阜県本巣市が市内の自治会長に渡している入団対象の年齢に達した男性の個人情報を載せた名簿が、一部地域で出不足金の徴収にも利用されていることが分かった。専門家は個人情報の外部提供の条件に反すると指摘している。

 本巣市では市が各地域に団員の定数を割り振り、自治会が団員を選び推薦している。市総務課は毎年次年度の選出作業が行われる時期に、希望する自治会に対象年齢の男性の名前や住所、生年月日、世帯主の情報を住民基本台帳から抽出し名簿にして渡している。

 真正地域では、毎年2月に自治会が対象者を集めて話し合いや抽選で新団員を選出。その年の春に選ばれなかった男性から1万2千円を集めて消防団に渡している。地元関係者は「大半の人が支払っている」と話す。同課担当者は取材に「名簿は団員の選出が目的で使用後返却してもらっている。出不足金の存在は把握していないが、事実なら目的外利用に当たり不適切なので調査する」と話した。

 市個人情報保護条例は「公益上の必要」がある場合、本人の権利利益を不当に侵害する恐れがない条件で個人情報の外部提供を認めているが、個人情報保護に詳しいひかり総合法律事務所(東京)の板倉陽一郎弁護士は「同意なく金を払えと言っているなら、本人の権利利益を不当に侵害する恐れはある」と指摘。「形式的に任意で拠出しているように見えたとしても自由な意思決定かは甚だ疑問。自治会ないし消防団の違法行為を知りながらさらに漫然と提供しているなら市の提供も違法だろう」と話した。

出不足金や協力金 県内12市町、実態調査

 消防団が入団しない男性住民から徴収する出不足金や、自治会などから受け取る協力金について、県内7市町が実態を調査する方針を決め、すでに調査中の5市町を含め岐阜市など計12市町が対策に当たることが4日までに岐阜新聞の調べで分かった。年度内をめどに強制的な徴収など不適切な行為がないかを消防団幹部に聞き取るなどし、適正化を図る考えだ。本紙の調べでは、出不足金や協力金は県内各地で慣例化し、消防団が活動費の一部として依存している実態がある。

 本紙は県内の全42市町村にアンケートを行った。出不足金と協力金の両方に関し「調査する」と回答したのは、関市、羽島市、揖斐郡池田町、加茂郡坂祝町、富加町の5市町。多治見市と養老郡養老町の2市町は「出不足金はないという認識」で協力金のみを調べる。

 多治見市の担当者は「各団の会計報告に毎年、協力金名目の記載が複数見られる。今月の分団長会議で無理に求めていないか確認し、不適切な徴収があればすぐにやめてもらう」と話した。

 本紙は1月下旬、消防団による不適切な出不足金の徴収について報じ、問題点を指摘した。岐阜市、高山市、各務原市、郡上市、加茂郡白川町の5市町はすでに調査に着手している。また揖斐郡大野町は1月末に出不足金の調査を終え「存在は確認されなかった」という。協力金については「自治会に介入しすぎるのは良くない」として調査しない。

 アンケートで「調査しない」と回答した市町村の多くは「実態がないと把握しているから」との理由。美濃市は昨年末、担い手不足が懸念されるとして実態把握のため、全団員449人に無記名のアンケートを実施した。総務課防災係の担当者は「既に定員(470人)を割っており、確保はますます難しくなる。組織の在り方を見つめ直す必要があった」と話す。結果、出不足金や協力金の存在は確認できなかったという。

 加茂郡七宗町は「協力金を受け取っていることは把握している」として調査しない方針。将来の団員確保策を考え、数年前に独自で調査した自治体もあった。大垣市では市消防団が調査する。本巣市は「検討中」と答えている。

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カテゴリ: 政治・行政 社会