「音楽を紡ぐ場所守りたい」再起のビート 休業のライブハウスに支援続々

2020年05月09日 09:38

空のステージを見つめる亀丸一弘さん。「アーティストがここを自分たちの色に染める日を待っている」と語る=4月27日、岐阜市柳ケ瀬通、岐阜・柳ケ瀬ANTS

空のステージを見つめる亀丸一弘さん。「アーティストがここを自分たちの色に染める日を待っている」と語る=4月27日、岐阜市柳ケ瀬通、岐阜・柳ケ瀬ANTS

 「ステージに立つアーティストによって、ライブハウスの表情は全く違うものに変わる。それがここの良さ」。岐阜市の繁華街、西柳ケ瀬地区でライブハウス「岐阜・柳ケ瀬ANTS(アンツ)」を経営する亀丸一弘さん(49)は、誰もいないホールでかつての光景を思い返す。新型コロナウイルス感染拡大を受けて4月1日に始めた自主休業は、緊急事態宣言の期間延長で今月31日まで継続。経営は苦境のただ中にあるが「出演者もお客さんも必ず戻ってくる」と信じ、終息までこの場所を守る決意を固める。

 3月初旬、大阪市のライブハウスでクラスター(感染者集団)発生が確認されると、出演者や客のキャンセルが出始めた。「ライブハウスイコール悪、との認識が世間で定着してしまった」。4月の売り上げは普段の1割まで減少し、5月中のイベントもなくなった。「解除後(再開しても)客足が戻るのはさらに先になるだろう」と不安を口にする。

 自身もアーティストの亀丸さんは、出演者からキャンセル料を満額もらうことはしなかった。「みんなアルバイトを掛け持ちして音楽を続けているから」。同じビルで経営するスタジオも閉じたため練習の場もなく、申し訳なさが募る。

 ライブハウスの経営は夢だった。2011年にオープンし、県内外のアーティストが出演。週末は欠かさずライブやイベントを続けた。「若い子こそが原動力」と、高校生の出演者にはチケット販売のノルマを軽くした。機材をそろえ、実力のあるバンドには県外のライブ会場も紹介。「岐阜の音楽シーンを変えたという自負がある」と胸を張る。

 休業後、過去に出演したアーティストから「売り上げを店の資金に充てて」とグッズが届く。再開後に使えるドリンクチケットも含め、自社サイトでの販売は伸びてきた。「エンタメ業界は最初に打撃を受け、回復は一番最後。それでも、アーティストが再びこの場所をいろんな表情に変える日を待ち望んでいる」

 ジャズライブも楽しめる岐阜市神田町の洋食屋「パノニカ」は4月中旬から、再開後に使える食事券を返礼品にクラウドファンディングで支援を募った。「音楽を紡ぐこの場所を守りたいから」と経営者の甲斐幸恵さん(41)は言う。

 指の故障でピアニストの夢を断念したが、「ミュージシャンを支えられる存在でありたい」と10年かけて資金をため、2015年に開店。出演者の6~7割が地元アーティストだ。常連客も増え、ジャズと食事を楽しむスタイルが根付いてきた中でのコロナ禍。「こんな時こそ音楽が必要なのに」ともどかしさを語る。

 クラウドファンディングは、期限を待たずに目標額を達成。多くが常連客やミュージシャンからの支援だった。「あらためて支えてくれる人のありがたさに気付いた。踏ん張って恩返しがしたい」と前を向く。


カテゴリ: くらし・文化 新型コロナウイルス