「装飾の美」伝え23年 飛騨高山美術館最終公開

2020年05月23日 10:27

  • 緑豊かな丘に立地する飛騨高山美術館=高山市上岡本町 
  • エントランスで来館者を出迎えるルネ・ラリック作「シャンゼリゼ・ショッピング・アーケードの噴水」 
  • 収蔵品の一つでエミール・ガレ作の花器「フランスの薔薇(ばら)」 
  • 20世紀初頭から現代に至るまでのガラス芸術の移り変わりを紹介する展示室 
  • 自然光の中のガラス作品を鑑賞できる展望ギャラリー 

 飛騨高山の市街地と北アルプス(飛騨山脈)を一望できる小高い丘の上に、19世紀末のウィーン建築を彷彿(ほうふつ)とさせる石造りの建物。1997年から23年間、質の高い装飾美術に出合う場を提供してきた飛騨高山美術館(岐阜県高山市上岡本町)が31日、惜しまれながら閉館する。美術館を併設したホテルに新しく生まれ変わるためで、最終公開が23日から始まり、現在の姿は見納めになる。

 創立者で収集家でもある館長向井鉄也氏の「美はトータルなもの」との哲学をコンセプトとし、フランスのエミール・ガレやドーム兄弟らのガラス工芸品、家具を中心に約1千点を収蔵。大階段を上ると、フランスの工芸家ルネ・ラリックのガラス作品の傑作「シャンゼリゼ・ショッピング・アーケードの噴水」(1926年)に迎えられ、アールヌーボー、アールデコ様式のガラス工芸品が、柔らかな光に照らされて並ぶ展示室を巡れば、しばし時空の旅を楽しめる。

 ガラス張りで開放的な渡り廊下で結ばれたインテリア館には、ガレやフランスの家具デザイナーのルイ・マジョレルらの部屋を展開し、家具や調度品など工芸作品を再現展示。2009年に三つ星を獲得したミシュランの旅行ガイドブック日本版で「宝石箱の中に宝石が入っているような美術館」と言わしめた空間を作り上げている。

 上質な空間の価値をさらに高めたのが、美術館には無縁と見られがちなきめ細やかなサービスと、おもてなし。体現されたのがミュージアム・ウエディングでありビアガーデンだった。雄大な北アルプスを借景とし、作品美、建築美、おもてなしの3要素が三つ星として結実した。

 運営する紀文(同市)の向井公規社長は「地域の皆さまには本当に感謝している。人が集い、五感で美を感じていただけたのでは」と振り返り、「(3年後に完成予定の)ホテルに併設する新美術館でも今のコンセプトを引き継ぎ、人の集える場にもしたい」と話した。

 新型コロナウイルス感染防止で臨時休館していたため、感染防止策を講じて開館するのは38日ぶり。31日までの間、感謝の意を込めて岐阜県民の入館料は無料。問い合わせは飛騨高山美術館、電話0577(35)3535。


カテゴリ: おでかけ くらし・文化