感染者ゼロでも大打撃 飛騨「新たな観光」探る

2020年05月26日 08:12

多くの店が休業を続ける古い町並み。内外装の補修や大掃除をして再開に備える店もある=25日午前10時15分、高山市上三之町

多くの店が休業を続ける古い町並み。内外装の補修や大掃除をして再開に備える店もある=25日午前10時15分、高山市上三之町

 岐阜県の飛騨地域3市1村は、政府の緊急事態宣言が全面解除された25日まで、新型コロナウイルス感染者を1人も出さなかった。飛騨高山や世界遺産の白川郷、下呂温泉など日本有数の観光地がある地元では「奇跡的」との声が上がるが、新型コロナが観光業に与えた打撃は甚大だ。インバウンド(訪日外国人旅行客)の復活が見通せない中、業者や自治体は国内誘客に注力しつつ、「3密」回避のおもてなしや滞在型観光といった「新たな観光」を模索する。

 中国が1月27日、海外への団体旅行を禁止したが、影響は限定的だった。衝撃が走ったのは2月21日。高山市と大野郡白川村をツアーで訪問した千葉県の70代女性の感染が分かった。岐阜県内で感染者が具体化した初の事例だった。地域で感染者は出なかったが、国内客のキャンセルも相次いだ。

 各地の入り込み客数は、前年同月比で大幅に落ち込んだ。高山は3月49%減、4月92%減で、白川郷は3月68%減、4月98%減。下呂温泉の宿泊客数は3月34%減、4月89%減(見込み)となった。

 県の非常事態宣言(4月10日)、国の緊急事態宣言の全国拡大(同16日)を受け、白川村の成原茂村長は、大型連休中の合掌造り集落「原則閉鎖」を発表。さらに高山市の國島芳明市長、飛騨市の都竹淳也市長と共に「飛騨はお休み中です」と来訪遠慮を求めるメッセージを出した。下呂市の山内登市長も観光客に自粛を呼び掛けた。

 今月14日に岐阜県で緊急事態が解除されたが、飛騨・高山観光コンベンション協会(高山市)は、会員に31日まで営業自粛を求め、多くのホテルや古い町並みの土産物店などは休業を継続。白川村も白川郷閉鎖を解除していない。

 観光業者が長期休業を受け入れた理由の一つに、「感染第1号になりたくない」という切実な思いがある。高山市のある経営者は「もし自分の所で飛騨地域初の感染者を出してしまったらどうなるか」と、イメージや看板に傷が付くことを恐れた。一方、感染ゼロの維持について國島市長は「多くの市民が人との接触を控えた。『他人にうつしたら申し訳ない』という飛騨人の人情のたまもの」と見る。

 飛騨地域の宿泊施設や観光客向け店舗の多くは、6月1日に再開予定。新たな観光について同協会の堀泰則会長は「インバウンド回復まで2、3年かかると想定し、まずは原点の国内旅行に立ち返る。各ガイドラインに沿って、浴場やロビーの入場制限など3密回避のおもてなしを目指す」と話す。白川村の60代店主は「合掌集落を見るだけの通過型観光から、文化体験などの滞在型観光を充実させる好機」と捉える。

 國島市長は、観光について「人が来る、人の移動で成り立つ産業で、感染防止との両立を図らねばならない。当面は近場、次に県外、さらに国内全域、少し先にインバウンド。段階的に誘客戦略を立てる」と再建を見据えた。


カテゴリ: 新型コロナウイルス 社会 経済