テレワーク拡大、移住促進の好機 大正大・塚﨑裕子教授に聞く 

2020年06月03日 09:27

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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、在宅勤務などの「テレワーク」が都市部を中心に可能な職種で急速に広がっている。コロナ収束後も継続を望む人は多く、場所を選ばない新しい働き方の定着は、地方の「移住定住」にも好影響をもたらしそうだ。受け入れ側の地方が備えておくことは-。岐阜県中津川市と地域研究に関わる協定を結ぶ大正大(東京都)の地域構想研究所、塚﨑裕子教授にビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を介して聞いた。

 -大正大では2017年と18年に地方移住とテレワークに関するアンケート調査を実施。テレワークが実現すれば地方に住みたいというニーズがあったものの、肝心のテレワークが広がらず、移住は転職や起業、フリーランスや老後に限られ、ハードルが高い印象でした。

 「通信技術は進化しているが、日本の企業は空間を共有してチームで働くスタイル。一人一人の役割が明確でなく個々の成果が見えにくい一方で、時間を物差しにするため、長く職場にいる人が評価されがちだ。契約書もペーパーでないと安心できないとか、ハンコ文化(押印の慣行)も足かせになっていた」

 「ただ今回、必要に迫られてテレワークを導入し、仕事の成果をきちんと見て評価するといった、働き方や人事労務管理の面でルールの見直しを始めた企業もある。テレワークも当たり前の働き方になるはずだ」

 -テレワークが定着することで、勤務先を変えずに地方に住めそうです。

 「老後の移住を想定していた人が定年退職を待たずに移住したり、移住は難しいと考えていた人が関心を持ったりするかもしれない。特に、場所を選ばないテレワークの定着は、地方の人口流出を防ぐ効果も期待できる。今の若い人は郷土愛が強く、地元志向で古里に住み続けたいという人が多い。企業も地元志向の優秀な人材を確保できるメリットがある」

 -大正大のアンケート調査ではテレワーク導入後の理想の出社頻度は週1、2回が最多で、月1回、2週に1回の順だった。岐阜県に住みながら首都圏の企業で働けるかもしれません。

 「岐阜県は通いやすい方だと思う。特にリニア中央新幹線は十分アピールポイントになる。岐阜県から毎日、東京に通うのは身体的にも通勤コストの面でも負担が大きいが、週1回程度なら可能だろう。移住先には豊かな自然環境、生活コストの安さ、都市部に出やすい交通の利便性を望む人が多く、医療や福祉を重視する人もいる」

 -企業誘致のあり方も変わりそうです。職場を呼ばなくても働く人が居住地を変えるだけです。

 「企業自体も都市部に本社を置く必要がなくなるため、地方移転の動きが出てくるかもしれないが、テレワークが定着すれば人の移動だけで済む。企業誘致よりハードルは低い」

 「ただ、通信環境の整備は必須。地方移住を希望しても自宅では仕事がはかどらない人もいるため、住宅街などにサテライトオフィスが必要になる。自治体が誰でも自由に使える公共のサテライトオフィスを整備するのも有効だ。廃校になった校舎を活用してもいいだろう」

 「移住定住といえば、自治体単独で取り組む印象が強かったが、今後は企業の意識も変わってくる。都市部の企業と連携して取り組むことが大切になる。企業研修などを巻き込んだ2~3週間の『お試し移住』から入るのも一案だ」

4割弱「定着後、移住増える」 在宅勤務者アンケート

 テレワークの定着で地方移住は増えるのか。ニーズはアンケート調査の結果からも読み取れる。インターネット接続事業大手のビッグローブ(東京都)が3月に行ったアンケート(在宅勤務する全国の20~60代の千人を対象)では、在宅勤務などのテレワークが一部でも定着すると考えている人が8割を超えた。定着して起こる社会現象では4割弱が「地方に住む人が増える」と回答した。

 大正大のアンケートからは、コロナ禍前の意識が読み取れる。2017年(東京、愛知、大阪在住で従業員300人以上の企業で働く30~50代の正社員1055人)と、18年(三大都市圏以外に住む大学生833人)に実施した。

 主に、17年調査では、少しでも地方移住に関心がある人はほぼ半数を占め、現在の勤務先に勤めながら移住支援が受けられるなら「移住したい」「検討したい」が合わせて4割弱だった。支援内容は、転勤の承諾に次いでテレワーク制度の確立・充実、通信環境の整備が続いた。18年調査では、テレワーク正社員としての採用に少しでも関心がある学生が6割。理由は「出身地に住みたい」が5割弱で最も多かった。


カテゴリ: 新型コロナウイルス 科学 経済