ハイレベルな「壁」本格的設備 スポーツクライミング国際連盟公認

2020年06月15日 07:51

  • 国内で初めて公認規格を満たしたスピードの壁(左)やリードに対応した壁を設置する「安八スカイウォール」=安八郡安八町牧 
  • 安八スカイウォールで研さんを積んだ選手たちと談笑する、施設を管理する永井久雄さん(右から2人目)、県内の競技関係者ら=同 
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◆高さ15メートル、腕磨く

 東京五輪で実施されるスポーツクライミング競技。岩肌を模した人工の壁に取り付けられたカラフルな突起物(ホールド)に手や足を掛けてよじ登るスポーツで、全国各地のジムなどで"壁"が設置されるなど人気が高まっている。そんな注目競技の「発祥の地」ともいえる場所が、実は岐阜県安八郡安八町にある。国際スポーツクライミング連盟の公認規格を日本で初めて満たした壁だ。

 車で名神高速道路安八スマートインターチェンジ(IC)を降りるとすぐに、ひときわ目を引く巨大な壁が見えてくる。旭金属工業(本社・京都市)の岐阜安八300年工場(安八町牧)の敷地内にあるのが「安八スカイウォール」だ。高さ約15メートルの壁が三つ並び、土、日曜日には一般開放され、子どもたちが楽しむほか、選手の練習も行われる。いずれもハイレベルな壁だが、中でも登る速さを競う「スピード」種目専用の壁が、2016年に同連盟に公認された。

◆モニュメント

 壁は幅3メートル、最上部の傾斜は95度にも達する。また体の接触に反応する計測機器や頂上への到達時間を示す電光掲示板を備え、使用するホールドや壁の角度や高さが同連盟の規格を満たしており、試合に準じた練習が可能になった。五輪本番の施設も同じ仕様という。

 誕生したのは01年。当時、工場完成に合わせて記念モニュメントを作ろうとした同社社長の意向で実現した。競技用の壁はまだ国内にほとんどなく、「本格的な競技施設としては日本で最初のはず」と施設関係者は振り返る。最近では首都圏などを中心に増えつつあるが「競技用の施設としては東海地方では今でも珍しいのでは」と話す。

 充実した設備は、県内選手育成を後押ししている。地域住民に交じり、選手もスポーツクライミングに取り組む。「岐阜の選手は安八で育ったと言っても過言ではない」と県山岳連盟競技委員長の小島一剛さんは語る。

 県連盟は、12年のぎふ清流国体を目標に、開催8年前から選手育成に着手した。本番では、安八での練習や大会が役立ち、成年女子リード種目での優勝など5種目で入賞を果たした。昨年の茨城国体で優勝した高校生の男子選手は「安八には国際大会で活躍する県外選手も来ている。選手としての心構えを学ぶ場になった」とまぶしそうに壁を見上げる。

◆はばたく県勢

 県勢は、安八から国際大会にもはばたく。世界ユース選手権に出場する小島果琳選手(岐阜聖徳学園大)や16年のIFSCクライミング・アジアユース選手権でジュニア男子のボルダリング部門で2位に輝いた亀山凌平選手(goodbouldering)も安八で育った。県連盟の塚原孝司理事長は「安八スカイウォールで鍛えることで、全国やその先の壁に挑むことができ、入賞し続けることができる」と話す。

 東京五輪に県勢の出場はかなわなかった。だが、建設当初から施設に携わり、今は安全管理責任者を務める永井久雄さん(69)=京都市=は「安八町がいつかスポーツクライミング五輪代表のふるさとになれば」と願う。京都から駆け付け、子どもたちに競技の楽しみ方と技術を教えてきた。20年間を振り返り「大会で獲得したメダルを持ってくる子どもたちの姿が何よりの楽しみ。体力のある限りは続けていきたい」と力を込めた。


カテゴリ: くらし・文化 社会