苦境の宿泊業、近場旅行に活路 地元の魅力知る機会に

2020年06月26日 11:36

「目指すべき地域づくりの在り方に変わりはない」と語る辻晃一社長=24日、美濃市本住町、NIPPONIA美濃商家町

「目指すべき地域づくりの在り方に変わりはない」と語る辻晃一社長=24日、美濃市本住町、NIPPONIA美濃商家町

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う国の緊急事態宣言が全面解除され、県内の観光地には徐々に人の姿が戻りつつあるが、本格的な回復はほど遠いのが実態だ。入国制限でインバウンド(訪日外国人客)も見込めず、苦境に立たされている県内のホテルや旅館などの宿泊業は、日本人による国内旅行の需要回復が鍵を握るとして、業界大手が提唱する近場の旅行「マイクロツーリズム」に活路を求める動きを加速させている。

 観光庁の宿泊旅行統計調査(速報値)によると、昨年1年間の県内の宿泊者数は延べ約669万人。うち近年注目が集まるインバウンドは延べ約145万人と21・2%にとどまり、依然として8割近くは国内旅行客が占めている。

 観光立市を経済戦略の柱に位置付け、滞在型観光の定着を目指す美濃市は昨年から、宿泊施設の整備が進む。昨年7月に古民家ホテル「NIPPONIA(ニッポニア)美濃商家町」(同市本住町)が開業し、今年も秋にかけて同ホテルの分館(同市殿町)や米ホテルチェーン大手のマリオット・インターナショナルが展開するフェアフィールド・バイ・マリオット(同市曽代)が相次いで完成する。そのさなかでのコロナ禍となった。

 6月に入り、市内の観光需要は少しずつ復調の兆しが見えるが、宿泊業の売り上げは低迷したまま。そこで期待されるのがマイクロツーリズムだ。新型コロナへの警戒感から、車で1時間以上かかる長距離の移動を避け、地元や周辺地域で充実した旅行を楽しもうとの考え方。市内の宿泊業者はさらに、都市部で生まれている「地方回帰」の機運をも捉えようともくろむ。

 「美濃市が目指すのは、ゆっくりと滞在し、仕事もでき、暮らすように時間を過ごせる旅のスタイル」と話すのは、NIPPONIA美濃商家町を運営するまちづくり会社「みのまちや」の辻晃一社長(40)。

 「都市部と比べて観光客や住民が少ない美濃は、密になる場面が限られる。逆に地方の魅力や安全性が再認識される好機となり、図らずも魅力は増した」と商機を見いだす。マイクロツーリズムについても、従来から名古屋圏を中心に東海地方の宿泊客が多く「提供する旅のスタイルは揺るがない」と自信をみせる。

 県内の業界団体や自治体も、高まるマイクロツーリズムの機運を後押しする。県は今月、県内在住者限定で県内のホテルや旅館の宿泊料を1人1泊当たり最大6割引きする事業を始めた。岐阜市も市民が割安で市内のホテルや旅館に宿泊できるなどの観光キャンペーンを展開。美濃市は事業者側への補助金として、1泊当たり3割相当を助成している。

 辻社長は「新しい生活様式への対応は必要だが、目指すべき地域づくりの在り方に変わりはない」と念を押す。「周辺に住む人にこれまで通り、地域の魅力を伝えていくこと。それが将来のインバウンド獲得にもつながるはず」と見据える。


カテゴリ: くらし・文化 新型コロナウイルス 経済