アパレル産業、客激減 マスク生産で生き残り図る

2020年06月30日 12:18

従来の商品の前に置かれた袋詰めされたマスク。各社マスク頼りの経営をしている=19日、岐阜市問屋町東、ビゼン

従来の商品の前に置かれた袋詰めされたマスク。各社マスク頼りの経営をしている=19日、岐阜市問屋町東、ビゼン

 JR岐阜駅前にあり、岐阜市の地場産業であるアパレルの街として知られる問屋町地区。だが今、仕入れに訪れるバイヤーの姿はほとんど見られない。近年、消費者の価値観の多様化などにより衰退を続けていたが、そんな中で発生した新型コロナウイルスの流行が、問屋町の企業の経営に追い打ちをかけている。

 「コロナの問題が起きてから公共交通機関を使って来る遠方の客はパタリといなくなった」と岐阜ファッション産業連合会理事で、問屋町にあるシニア向けレディースファッションメーカーの50代の社長は肩を落とす。今も問屋町を訪れるバイヤーは、コロナ発生前の3分の1から4分の1程度しかいない。

 対策として、問屋町の各企業は、見本の商品を得意先に送付して対応。しかし送れるのは得意先に限られ、新たな顧客獲得にはつながらない。また遠方からのバイヤーがいなくなったことで、東京や大阪など都市部に集中している百貨店や大手小売店といった大口顧客との接点もなくなった。

 先行きも明るい兆しは見えない。「戻ってコロナ発生前の半分から6割くらいまでではないだろうか」と同理事は指摘する。問屋町のメーカーは日本製で品質が高いシニア向けのお出掛け着が主体。しかしコロナで新しい生活様式が定着すると、敬老会など人が集まり、おめかしをするような場が従来通り開かれるようになるかは未知数だ。

 服が売れない中、問屋町の各社はこぞってマスクを手掛け、生き残りを図っている。同社もマスクを扱い、6月の売上高のうちマスクが6割程度を占める。しかしマスクの単価は数百円で、同社が扱う服の10分の1程度。単価が安く、各社が一斉に取り組んで競争が起きており、マスクで成長を図ることは難しい。

 コロナによる影響は、問屋町の企業に限らない。比較的規模が大きな岐阜市内のメーカーも、中国で生産が滞ったことにより打撃を受ける。総合アパレルメーカーの社長は「当社は生産の7割強が中国。ASEAN(東南アジア諸国連合)にも生産拠点を広げているが、ほとんどの素材が中国からの持ち込みで、中国がなくては生産は成り立たない」と話す。コロナによる中国生産への影響から国内生産に目を向ける動きが一時はあったものの「採算が合わず、生産の国内回帰は考えづらい」と同連合会の理事は指摘する。中国依存の生産体制を続けざるを得ない状況だ。

 同連合会の野口千寿雄理事長(78)は「今は金融機関の手厚い融資で手元のお金に余裕があるところが多いが、夏ごろにはお金が尽きてくる。そうなるとやめる企業も出てくるだろう」と見通す。コロナによる倒産や廃業が今後増える可能性は、より高まっている。


カテゴリ: 新型コロナウイルス 社会 経済