豪雨で迅速避難、けが人なし 住民らの危機意識高く

2020年07月15日 08:11

土砂で埋まった寝室を前に豪雨の夜を振り返る山下信義さん=14日午後2時18分、下呂市小坂町長瀬

土砂で埋まった寝室を前に豪雨の夜を振り返る山下信義さん=14日午後2時18分、下呂市小坂町長瀬

 岐阜県内を襲った豪雨により、下呂市内で浸水や土砂流入などの被害が出てから15日で1週間を迎えた。今回の豪雨で、住宅に大きな被害があったにもかかわらず、同市内では人的被害は出なかった。住民らが災害の危険性が高い地域と認識し、住民らによる声の掛け合いや、自主防災組織の働きにより、人的被害を防ぐことができた。

 8日未明に土石流が住宅地を襲った同市小坂町。土石流が発生した白土洞谷沿いに住む元市議の山下信義さん(83)=同町長瀬=は、愛知県に住む娘2人から7日夜に早く避難するように何度も電話で促され、その日の夜に避難したことで助かった。「沢からガシャガシャと石が転がる音が聞こえてまずいなと感じていた。近所の人に声を掛けて避難した」という。

 自宅には2階の高さまでに達するほどの大量の土砂が押し寄せ、1階寝室には雨戸とガラス戸を破って流れ込んでいた。「ベッドで寝ておったら死んでいた」。あまりの惨状に言葉を失った。市議時代に対策を進めるように行政に求めていただけに、甚大な被害を受けた家を見ると痛恨の念に駆られる。「レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)に入っているので、砂防ダムを整備してくれと言っていた。このままでは危なくて住めない」と地元の思いを訴える。

 付近に住む別の80代男性は「8日午前2時ごろ、避難しようと玄関を開けたら、道路が川になっていた」と話すように、すでに避難所に行くのは不可能な状態だった。朝まで自宅2階で過ごしたといい、垂直避難で難を逃れた。

 約100世帯が住む大垣内地区でも下呂署小坂駐在所前の大垣内谷で土石流が発生したが、日頃から培った防災力で人的被害を防いだ。同地区では防災防犯隊を組織し、近所同士で声を掛け合う小グループを編成。今回は雨の状況を見て7日夜に地元公民館への避難をいったん取りやめたが、水路の水があふれるなど災害の予兆を把握すると、8日未明に再び避難を呼び掛け、1人暮らしの高齢者や土砂災害の危険が迫る地域の住民ら約30人を迅速に避難させた。民家が土砂に埋もれる被害があったが、けが人はいなかった。

 「今までずっと訓練をやってきたので、住民の意識が高かった」と話すのは防災防犯隊長の石丸照彦さん(67)。それでも降り続く大雨に住民の災害への不安は消えない。「大雨への不安が強くなっており、『この雨なら大丈夫』と言えなくなっている」と不安を口にする。


カテゴリ: 社会