昔ながらの外観、熱い湯...銭湯65年に幕 高山市・天満湯

2020年09月01日 08:22

  • 営業を続けられたことへの感謝の思いを語る門前庄次郎さん=高山市天満町、天満湯 
  • 昔ながらの趣が残る浴場=同 

 岐阜県高山市天満町の銭湯「天満湯」が31日、建物や設備の老朽化に伴い閉店した。65年にわたり多くの客の体を温め、愛され続けた。経営する門前庄次郎さん(67)は「お客さんのおかげでやってこられた。寂しいけれど、感謝の気持ちでいっぱい」と思いを語る。

 亡くなった父の昌一さんが1955年に始めた。風呂のない家庭がまだ多く、住民たちの暮らしを支えていた。外観は当時のままで、店内も昔ながらの趣が残る。他の店と比べて湯が熱く、ジェットバスと人気の蒸し風呂、薬湯がある。門前さんや市によると、市内にはかつて銭湯が約30軒あったが、天満湯を含め3軒にまで減った。

 10年ほど前に引き継いだ門前さん。「銭湯は地域の人がゆっくりしながら話をする、いわば井戸端会議の場。皆さんそれを楽しみに来ていたのではないか」と続いた理由を話す。時には、客から感謝の言葉を掛けてもらったり、野菜をお裾分けしてもらったりと、温かい触れ合いがやりがいになった。閉店に当たり、「どうしてやめてしまうのか」「残念だ」という声もあった。「申し訳ないし、つらい。ただ、そういう言葉を聞くと愛されていたのを実感する」と感慨深げだ。

 最終日もいつもと変わらず午後3時にのれんが掲げられ、客たちは至福のひとときを過ごした。会社員の男性(57)は「最後なので絶対に来るつもりでいた。とても気持ち良かった」と満足した表情。40年通う男性(82)は「これで終わりと思うと涙が出る。もっと長く入っていたかった」と惜しんだ。


カテゴリ: くらし・文化