「準中型」と知らず仕事で運転、無免許摘発 行政処分軽減の判決

2020年09月16日 08:57

 普通免許で準中型車を運転した無免許運転によって、免許の取り消しと再取得できない欠格期間を2年間とする行政処分を受けた岐阜県内の中国人技能実習生の男性(33)が、処分は重すぎるとして県に取り消しを求めた訴訟で、岐阜地裁(鈴木陽一郎裁判長)が欠格期間を1年に短縮する判決を言い渡していたことが分かった。判決は4日付。専門家は「処分が軽くなることはまれな上、具体的な条件を司法が示した画期的な判決」と話している。

 訴状などによると、男性は工事業の会社に勤務し2019年1月、中国で取得した免許を切り替える形で日本の普通免許を取得。同年4月2日、業務中に郡上市内の東海北陸自動車道で追い越し車線を走り続けたとして、通行帯違反で警察に摘発された。

 警察が車検証を確認したところ、運転していた貨物車の総重量が普通免許で運転できる上限の3・5トン未満を超えた3・525トンの準中型車だった。男性は無免許運転で違反点数25点が科され、同年9月13日付で免許の取り消しと欠格期間を2年間とする行政処分を受けた。刑事処分は不起訴だった。

 職場には総重量が3・445トンの別の貨物車もあったが、大きさはほぼ同じで会社も2台とも3・5トン未満だと思い込み、男性に日常的に運転を指示していた。

 男性側は裁判で「『違反かもしれない』と思う余地もなかった。故意が認められない」として、無免許運転の罪が成立しないことや、成立するとしても処分が重すぎるなどと主張。一方、県側は車に備えられた車検証で準中型車であることは簡単に確認でき、処分を軽くすべきケースには当たらないと反論していた。

 判決理由で鈴木裁判長は会社も勘違いをしていたことなど、男性には「考慮すべき特段の事情がある」と判断。県公安委員会に対し「裁量権の範囲を逸脱し、または乱用したものとして違法」と指摘した。免許取り消しそのものには逸脱はないとした。

 男性の代理人弁護士は「免許取り消し処分そのものの取り消しを求めていたので控訴を検討する」、県警監察課は「判決内容を精査して対応を検討する」としている。

◆法改正で新設「無免許」増加 専門家「故意でなければ処分できず」

 交通違反の行政処分は道交法に基づき、処分の重軽の基準を示した「処分量定基準」が定められている。運転免許を取得することができない欠格期間は、「運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情」がある場合に短縮できる。交通法規に詳しい高山俊吉弁護士(東京弁護士会)は「免許の停止や取り消しなどで公安委が実際に処分を減軽することはまれにあるが、理由は公表しないため、基準は完全にブラックボックスの状態」と指摘する。

 無免許運転は3年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事罰に加え、違反点数が25点、欠格期間は2年の行政処分がある。免許取り消しなどの処分歴がない人が一般違反行為を理由に免許を取り消される場合、15点以上で1~5年の欠格期間となっている。

 高山弁護士によると、2017年の道交法改正で、普通免許で運転可能な車の総重量が5トン未満から3・5トン未満に引き下げられ、3・5トン以上7・5トン未満の車を運転できる準中型免許が新設された。その後、原告の男性のように勤務先の勘違いで無免許運転をしてしまう人が増えたという。

 今回の判決について「事情があるにもかかわらず公安委が処分を減軽しないのは違法だと司法が明言し、基準も示した」と評価した上で、「無免許運転は故意犯。今回のようなケースは犯罪を犯している認識がないため、本来は処分を受けてはいけないはずだ」と述べた。

 県警によると昨年1年間に免許の対象外の車を運転したとして、県公安委が免許を取り消したのは10件。


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