だろう運転「一生背負う」被害者に面会重ね償い

2020年09月22日 07:38

  • 「事故を一生背負っていく」と語る男性=14日、県内 
  • 男性が事故を起こした現場。時速50キロで交差点に進入しようとして、右から来た自転車と衝突した=県内 

 21日に始まった秋の全国交通安全運動。ドライバーの少しの不注意が、交通事故を招く可能性がある。実際に事故を起こした岐阜県内の会社員の男性(25)は「守っていたのは交通ルールではなく、勝手に作っていた自分のルールだった」と悔いる。周囲の助けを得ながら自身の行いを反省し、被害者への償いに努めている。

 「やばい、ぶつかる」。瞬時にブレーキを踏み込んだが止まらない。ドーンという音と共に衝撃を感じ、自転車に乗った女性を跳ね飛ばしていた。わずか1、2秒の出来事だった。

 事故を起こしたのは昨年11月25日午前11時ごろ。住宅街にある見通しの悪い交差点だった。板金業の会社に勤める男性は、事前に準備しておかなければならない資材が事務所にないことに気付き、社用車で急きょ問屋に向かっていた。

 現場に一時停止の道路標示はないが、朝は登校中の子どもたちがよく通る場所。昼間だったこともあり、ぼんやりと「人は来ないだろう」と思い時速50キロのまま突っ切ろうとしたときだった。右から自転車に乗った女性が横断しているのに気付いたが、間に合わなかった。72歳の女性は頭を強く打ち一時意識不明となったものの、一命は取り留めた。

 「亡くなってしまったらどうしよう」。警察に事情を聴かれている間も、容体が不安で気が気でなかった。当時は精神的にも不安定な状態で夜も眠れず、事故を起こす夢を何度も見た。数日後、男性は初めて女性や親族に宛てて手紙を書いた。けがを負わせたことへの謝罪、二度と事故を起こさない決意をつづった。「ようやく第一歩を踏み出せた気がした」

 事故から10カ月。新型コロナウイルスの影響で、現在も入院を続ける女性との面会はできないが、家族への訪問を続けている。

 今年8月、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の罪に問われた男性の公判では、女性と同居する次男(45)が情状証人として出廷し、「処罰は求めません。何度も母に面会に来て誠意を感じる。誠意には誠意で応えろというのが母の教え」と証言してくれた。執行猶予付きの判決だった。男性は「事故を一生背負い、少しでも女性が回復するよう、自分にできることをする」と誓う。

 事故直後、会社の社長(46)から言われた一言を重く受け止めている。「事故をしたことでお前自身の態度が試されている。本当に反省しているのか、支えている周囲も見ているぞ」。会社では、男性のみならず社を挙げて事故を忘れないようにと、ボンネットがへこんだままの車を修理しないでいる。

 男性は「昼間は人が通らないだろうと勝手に予想する『だろう運転』をしていた」と振り返る。「通勤時は徐行していたのに、どうしてあのとき速度を落とさなかったのか。後悔し続けている」


カテゴリ: 事件・事故 社会