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がんと闘い高校受験「経験伝えたい」看護師に AYA世代支援へ全国運動



闘病を振り返る柴田凌さん=岐阜市柳戸、岐阜大病院
闘病を振り返る柴田凌さん=岐阜市柳戸、岐阜大病院

 15歳から39歳までの「AYA世代」という、若い世代のがん患者への支援を呼び掛ける運動が14日から全国で始まる。岐阜県内でもセミナーや交流会が予定されている。中学生で悪性リンパ腫になり、現在は看護師として働く岐阜市の25歳の男性も参加する。進学、就職、結婚、出産。人生のイベントが重なるこの世代で病気になったからこそ直面した経験を語る。

◆ステージ4「置き去りされたくない」受験

 クリーンルームの窓から見た外の世界は夢のように輝いていた。岐阜市民病院(同市鹿島町)の小児病棟の一角。外を歩いているだけの人がうらやましくて仕方なかった。中学3年生の1月、柴田凌さんは悪性リンパ腫で入院した。そこで8カ月過ごした。

 ステージ4だった。高校受験が迫っていた。治療のスケジュールを調整してもらい、1日だけ病院から外出して受験。長良高校(岐阜市)に入学した。

 闘病中、柴田さんは学業の遅れが不安だったという。浪人、留年は避けたかった。「置き去りにされたくなかった」。友達と同じように受験し、学校に通うことを目標にした。

◆真っ正面から向き合ってくれた

 心は荒れた。治療はつらく、行動は制限された。「家に帰りたい」「外に出たい」。主治医や看護師に食ってかかった。退院からしばらくして、人生で一番つらい時に真っ正面から向き合ってくれていたことに気付いた。

 がんに打ち勝ち、「自分の経験を生かせるのは看護師」と中部学院大学(関市)に進学。水泳インストラクターのアルバイトで大きくなった体が周りを驚かせ、安心させた。卒業後に岐阜市民病院に就職、もうすぐ4年目になる。

◆AYA世代の相談も

 今、柴田さんはがんと闘うAYA世代の患者の相談相手になることもある。「どう乗り越えましたか」との相談に、小さくとも目標を立て、達成することを目指してきた自分の経験を伝える。自分が支えられたように患者を支えている。

 昨年夏に入籍した。「AYA世代は(就職や結婚など)人生の分岐点が続く。この世代で病気と闘っている人たちがいることを広く知ってほしい」と願う。

【AYA世代】

 「Adolescent and Young Adult」(英語で思春期・若年成人)の頭文字から名付けられた。日本では15歳から39歳が対象で、この世代のがん患者は全国で年間約2万人いる。成人がんと比べてがんの種類が多く、患者は少ない。進学や就職、結婚や子育てなど患者それぞれの状況が異なり、情報提供や相談体制が不十分とされる。2018年に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画には、AYA世代のがん医療の充実が盛り込まれている。

◆14日から支援週間 県センターなどウェブセミナー

 AYAがんの医療と支援のあり方研究会(名古屋市)は14日から21日までを「AYA week 2021」として初めて設定した。全国で70以上の団体がイベントを開く。

 県小児・AYA世代のがん等成育医療相談支援センターは14日午後1時から同3時に、ウェブ形式でセミナーを開く。

 岐阜大病院の古井辰郎臨床教授(産婦人科)ががん患者の生殖医療について説明。県の担当者が医療費助成制度、県教育委員会の担当者が高校生の遠隔授業について解説する。セミナー後にはAYA世代に限定した交流会も開く。

 同センター長の小関道夫医師(岐阜大病院)は「医療の進歩で若い世代のがんが治るケースは増えているが、生活の質(QOL)の悩みはある。社会全体で良い体制をつくっていける機会にしたい」と話す。9日締め切り。申し込みは同病院医療支援課医療支援係、電子メール、gjha04006@jim.gifu-u.ac.jp

 岐阜市民病院も14日午後1時から同2時半、ウェブ形式でセミナーを開く。問い合わせは同病院がん診療支援部、電話058(251)1101、内線4402。

カテゴリ: 医療 社会