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「わたし、気になります」高山市モデルの氷菓、生きびなと風景精緻に



 「氷菓」主人公の高校1年生、折木奉太郎(おれきほうたろう)は何事にも積極的には関わろうとしない"省エネ"少年。「わたし、気になります」が決めぜりふの同級生、千反田(ちたんだ)えるをはじめとする仲間と校内の謎解きを繰り広げる物語の舞台は、岐阜県高山市がモデル。小説、アニメ、実写映画で描かれ、ファンを広げてきた。

 昨日4月3日は、本来ならきらびやかな衣装をまとった「生きびな」たちがまちを彩るはずだった。高山市一之宮町、飛騨一宮水無神社の第70回飛騨生きびな祭はコロナ禍で開かれず、来年に延期となった。

 アニメ版「氷菓」の最終話では、生きびな祭が描かれた。2012年の放送後、祭りの参拝客は2千人に上った。宮司の牛丸大吾さん(60)は「驚くくらい多くの参拝客が来た。マイカーにキャラクターイラストがびっしり描かれた"痛車(いたしゃ)"がたくさん並んでにぎやかで」。今年、延期が決まった時には問い合わせが多く寄せられたという。

 生きびな祭は元々、養蚕業祭で、飛騨地域では月遅れのひな祭りでもある。「縁結びの御利益を願って参加する人が多かった」と牛丸さん。アニメについては「神社内が細かく描写されていた」と目を細める。

 高山市本町の商店街にある飛騨高山アンテナショップ「まるっとプラザ」。須藤幸世店長(47)は、今なお毎日のように巡礼客を迎える。「コロナ以前は北海道から沖縄、海外からも来ていた」。店内には、奉太郎の教室をイメージした机が置かれ、壁にはアニメのポスターが隙間なく貼られる。来訪者ノートはもうすぐ20冊目。「氷菓最高」の文字が並ぶ。

 えるが奉太郎を呼び出した喫茶店「パイナップルサンド」。モデルの店は商店街から少し離れた場所にある「バグパイプ」だ。えるがウインナーココア、奉太郎はコーヒー2杯を頼んだ。えるの制服姿をまねた巡礼客が二人と同じ席に座ることもあるという。

 アニメ版を制作した京都アニメーションは高山の風景を忠実に描写し、聖地巡礼の盛り上がりに貢献した。しかし、監督ら制作陣は19年の放火殺人事件で犠牲となった。それでも作品は色あせず輝きを放つ。灰色だった奉太郎の高校生活が、えるたちとの出会いで一変したように、「氷菓」はファンの生活に今なお彩りをもたらしている。

【作品紹介】高山市出身の小説家米澤穂信さんのデビュー作として2001年に発表。神山高校に入学した折木奉太郎はなりゆきで古典部に入部、日常に潜む謎を次々と解き明かし、古典部部長・千反田えるのおじ・関谷純に関わる過去にまつわる謎を解いていく。高校入学の4月から夏休みに入って間もない7月末の出来事を描く。12年にアニメ、17年に実写映画化された。

カテゴリ: くらし・文化 動画