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東海道線関ケ原駅、深夜の戦い 鉄道信号更新、安全支える技術者の舞台裏



  • 歴史ファンも降り立つ関ケ原駅。実は複数の線路が並行している=不破郡関ケ原町関ケ原 
  • 膨大な量のチェックリストを抱える押谷明善さん=不破郡垂井町、JR東海・岐阜電気区垂井分室 

 天下分け目の関ケ原合戦が繰り広げられた岐阜県不破郡関ケ原町。JR東海道線の関ケ原駅で下車して古戦場巡りを楽しむ歴史ファンも多いが、この駅、こぢんまりとしたローカル駅のように見えて、実は複雑な構造になっている。東西をつなぐ鉄道輸送の要となる同駅。列車の安全運行を支える現場の技術者たちの舞台裏をのぞいた。

 昨年秋、町内に岐阜関ケ原古戦場記念館がオープン。多くの歴史ファンが降り立つ同駅だが、実は今年春までの約2年間、人知れず、だが安全運行には欠かせない重要な工事が行われていた。鉄道信号システムの更新作業だ。列車に進行や減速、停止などを指示する信号機を発光ダイオード(LED)化したほか、信号機や線路の分岐器を操り、列車の進路を制御する「連動装置」と呼ばれるコンピューターやケーブルを最新のものに入れ替えた。約27年ぶりの全面更新だ。

 「一晩のうちに全てを更新できるわけではない。深夜の、列車が走らない時間帯を見ての作業だった」

 そう話すのは、ベテランの目で作業を支えたJR東海・岐阜電気区垂井分室助役の押谷明善さん(67)=滋賀県長浜市=。東海道線の岐阜県区間を中心に、半世紀にわたって信号系の保守点検を担ってきた第一線の技術者だ。

 信号機や分岐器は列車運行の生命線。同駅の前後区間を運行停止にすれば一気に作業できるが、列車を止めるわけにはいかない。自然と終電後の作業になり、一つ一つ取り付けては動作を確認。全ての作業が終わるまでは新システムに移行できず、列車が走る時間になると元のシステムに戻して列車を通した。その戻すときも正常に動くか毎回入念に確認。「一本でも配線に誤りがあると事故になりかねない。神経を研ぎ澄ませてきた」と振り返る。

 そこに同駅なりの難しさも加わった。東海道線の普通列車が止まるだけの駅だが、よく見ると複数の線路が並行している。大垣-関ケ原間の線路が二手に分かれ、下りの特急と貨物列車だけが不破郡垂井町北部の線路を経由し、再び同駅で合流するからだ。そのため、駅の規模の割には信号機や分岐器が多い。さらに東海道線は東西をつなぐ大動脈。終電後も深夜に寝台特急や貨物列車が通過する。列車が走らない時間帯は上下線とも2時間弱しかない。そのわずかな時間を狙っての作業だったという。

 チェックリストは数百ページにも及んだが、同駅で列車事故のニュースがなかったように無事故で作業を終えた。世間の人が寝ている間に何事もなかったかのように-。

 約27年ぶりの全面更新を終えた押谷さん。次回の更新は後輩たちが担う。「鉄道の安全運行は、先輩たちの経験が教訓になっている。臆測で判断すると間違える。確認漏れが大事故につながる。決して手を抜かず、安全運行に貢献してほしい」。次世代にバトンを託す。

カテゴリ: くらし・文化 社会