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「最後の砦」緊迫 新型コロナ重症患者が次々、岐阜大病院満床続く



医療機器につながれた新型コロナウイルス重症患者を診る医師=5月、岐阜市柳戸、岐阜大病院(同病院提供)
医療機器につながれた新型コロナウイルス重症患者を診る医師=5月、岐阜市柳戸、岐阜大病院(同病院提供)

 岐阜県内で新型コロナウイルスの新規感染者数が減少する中、重症者は9日も21人と7日連続で20人以上となり、医療提供体制は依然として厳しい状況に置かれている。県内屈指の救急医療体制を誇り「命の最後の砦(とりで)」と呼ばれる岐阜大病院(岐阜市柳戸)の高次救命治療センターは他の医療機関では治療できない重症患者を引き受けており、重症病床は現在もほぼ満床だ。「状況が落ち着くのはまだ先」。警戒を緩めず、医師、看護師らスタッフが奮闘を続ける現場を取材した。

 「軽く考えていた」「自分が家族にうつすとは思わなかった」。市中感染が顕著で、家庭内で広がるケースが多くなった第4波さなかの5月。新型コロナウイルス重症患者を収容する同センターの医長、三宅喬人医師(40)が、うなだれる患者の家族を前に、治療方針を説明していた。

 別の病床では、人工呼吸器につながれた重症患者を、医療用ガウンを着込んで治療する医師の姿があった。同センターは、市中の病院では症状が手に負えない、高度な治療が必要な患者の転院を引き受ける。人工心肺装置のECMO(エクモ)を使うケースもある。重症化した時点で体には人工呼吸器がつながれており、転送に伴う移動には特に気を使う。感染防止のため、患者に触れるスタッフの他に、ドアを開ける、エレベーターのスイッチを押すなど、各動作を担う人員を配置しており、対応するスタッフ数は通常の倍に膨れ上がる。

 新型コロナに限らず、救急治療全般において県内屈指の技術、機材、スタッフ数を誇る同センター。新型コロナ治療では、血中の酸素飽和度が基準値以下のいわゆる中等症の病棟とは別に、肺が極度にダメージを受け、自発呼吸もままならないような重症患者向けの病床6床を持つ。

◆「落ち着くのはまだ先」

 県はコロナ病床が逼迫(ひっぱく)する事態を想定し、4、5月の2カ月で県全体で約100床を積み増した。それでも第4波では岐阜大病院の中等症病棟30床は8割まで埋まった。5月17日には県の病床使用率が73・5%とピークに達し、24日には重症患者も24人と過去最多となった。センターの重症病床は、5月中旬から空いては埋まるを繰り返し、現在もほぼ満床の状態が続く。逼迫が顕著となった5月17日からは、コロナを含む救急対応のスタッフ数を確保するため、ドクターカーの運用を一時的に取りやめている。

 スタッフが各日の患者の治療方針を決める毎朝のカンファレンスについて、三宅医師は「第1波の昨春は手探り状態だったが、1年超がたち、治療実績が蓄積されてきた」と語る。人工呼吸器の数値設定のノウハウ、投薬の効果のデータ、抗炎症薬のステロイド投与の有効性を示すデータが全国的にもそろい、症状別の対応が定まりつつある。

 一方、治療方針を巡る患者家族とのやりとりは、依然として手探りという。感染予防のため面会はできず、家族が本人を目の前にすることができないためだ。重症化すればするほど治療にはリスクも伴う。危機的状況にあることを口頭のみで伝えることの難しさに悩まされる。

 センターでは昨春から先月末までに27人の重症患者を受け入れてきた。新規の感染者数は、ピークアウトの様相を呈するが、三宅医師は「新規感染者の減少と重症患者の病床の状況は2週間ほどのタイムラグがある。落ち着くのはまだ先の話」と言う。重症化のスピードが速いとされる変異株の存在もあり、警戒感を緩めないよう訴える。

カテゴリ: 医療 新型コロナウイルス 社会