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飲食店「つぶれてしまう」批判覚悟で通常営業 席数減らすなど感染対策を徹底



 岐阜県内随一の繁華街の岐阜市玉宮地区から、人通りと飲食店の明かりが消えている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「まん延防止等重点措置」が適用され、飲食店が県から営業時間短縮と酒類を提供しないように要請されているためだ。その中で、批判を覚悟の上で通常の営業を続ける店舗がある。それぞれの事情を聞いた。

 5月末が適用期限のまん延防止措置が6月20日まで延長され、初めて迎えた週末の5日。日没前の玉宮地区を訪ねた。2週間前と比べると、人通りは増えた印象を受ける。客引きの姿も目立つ。ある居酒屋はビールを片手に料理をつまむ人たちでにぎわい、コロナ禍前のようだ。今月に入って「これ以上、要請には応じられない」と通常営業に切り替えた店が幾つもあった。

 市内の対象飲食店は3611店。市が今月1~4日に調査したところ、約99%が要請に応じていた。新型コロナに対応する特別措置法に基づき、県が休業命令を出した飲食店はないという。

 「ぎりぎりですよ」。4月にオープンし、未明まで開いている焼き肉店の男性経営者(27)は営業状況を語る。高校1年生から焼肉店で働き、「30歳までに独立したい」という夢をかなえた。新型コロナの感染状況は気掛かりだったが、最終的に開店を決断したのは県内の新規感染者の1桁台が続いた3月。オープン直後の4月23日に県が独自の非常事態宣言を発表し、時短営業を要請した。

 通常営業を行うのは開業に費用がかかり、10人近いアルバイトを辞めさせたくはなかったためだ。「始めは罪悪感はあった。アルバイトに働く環境を与えられ、『食べる所がない』と困っているお客さんを助けることができ、人のためになっていると思うようになった」。行政からは数回、要請に応じるように指導されたという。「(要請に)大義はあると思うが、僕にも店がつぶれてしまうという理由がある」。融資の返済を控えており「(手元に資金があれば)要請に応じていた」と苦しい胸の内を話す。

 一方、フレンチバルの男性経営者(38)は元雇われ店長。運営会社から店を買い取り、今月独立した。約200種類のワインを手頃な価格で飲めるのが売りだ。時短営業には10日まで応じていたが、11日から通常の営業時間に戻した。

 運営会社は愛知県や三重県でカフェや定食屋などを複数展開しており、要請に応えて玉宮の店舗で時短営業をしても大きな影響はなかったという。しかし、経営者になったことで事情は変わった。「自分の給料もアルバイトの給料も出なくなり、食いぶちがなくなってしまう。要請に応じても、協力金の支払いは数カ月先だ」と明かす。

 席数はコロナ禍前の4分の3に減らし、間隔を空けて来店客を案内するなど感染対策を徹底。飲酒できることを伝える張り紙は数日前から店頭に掲示している。喜んでくれる客や2日連続で来店した人もいた。

 「厚遇され、休んで金をもらっているのに文句を言うな」という飲食業界への一方的な批判がつらい。行政に対する不満もある。「飲食店がコロナの感染を拡大させているというレッテル貼りはやめてもらいたい。飲食店以外の支援もしてほしい」と訴える。

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