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東京パラ前向く力に「選手は障害と向き合い挑戦してきた」祭典に期待



精神科に特化した訪問看護を手掛ける直野武志代表(右)。東京パラリンピックに関し「当事者が希望を持つきっかけになり得る」と期待を寄せる=岐阜市六条東、くらしケア本部
精神科に特化した訪問看護を手掛ける直野武志代表(右)。東京パラリンピックに関し「当事者が希望を持つきっかけになり得る」と期待を寄せる=岐阜市六条東、くらしケア本部

 「精神障害の人は参加できないんだ...」。精神科に特化した訪問看護を手掛ける「くらしケア」(岐阜市六条東)のスタッフは、インターネットで何気なく見た東京パラリンピックの紹介ページで、精神障害者の出場が認められていないことを初めて知った。彼らにとって、24日に自国で開幕する障害者スポーツの祭典は無関係なのか。

 「どうせ自分なんか、と諦めている人は多い。何とかしたいと思っていても、どうしていいか分からずに苦しんでいる」。直野武志代表(52)は、統合失調症やうつ病、引きこもりなどの精神疾患を抱える人や、その家族と向き合ってきた実感を語る。「パラアスリートは自分にできることを見つけて、挑戦してきた人たち。パラリンピックでその姿を見ることで、何か希望が持てるかもしれない」

 自身も障害当事者だ。高校1年生の頃、骨肉腫から右足を切断し、大腿(だいたい)義足での生活が始まった。「この時点で、いろいろなことを諦めないといけないと思っていた」。走ることを諦めた。またがってみた自転車は、うまくこげずに諦めた。夏の海、健常者たちがサーフィンで波に乗る姿をうらやましく眺め、冬のスキーブームにも乗れなかった。ただ、車には乗れた。移動の自由を手に入れ、少しずつ社会との距離を縮めた。

 当時との違いは、スポーツ義足など、身体機能を失った後の選択肢に関する情報にアクセスしやすくなったこと。「自分にもできるかもしれないと、挑戦のきっかけをつかもうとするかが大事」。前向きな姿勢は、パラリンピックで期待される多様性の理解の促進にも欠かせないと思うからだ。

 何に困っているかをうまく表せず、他者との距離を縮められずにいる当事者は少なくない。精神障害は外見だけで分からないことも多い。近年はヘルプマークなど、病気や障害などへの配慮が必要なことを周囲に知らせる手段の普及が図られつつある。「困っていることを何らかの形で当事者から伝えることが社会の寛容さを生み出し、結果として当事者の生きづらさを薄めていくのではないか」。互いに理解し合うために、当事者側のアクションも十分ではないと感じている。

 一方で、こうも考える。精神や知的といった障害の種別は「その人の表面でしかない」と。「身体障害を抱えるパラアスリートだって、陰でどんな苦労をしてきたか分からない。精神的に苦しんだ時期もあったはず」。スタジアムまでの軌跡に思いをはせることで、障害にかかわらず、一歩を踏み出すきっかけにできるかもしれない-。

 スタッフたちと考える。「何か困ってないかとか、当事者に対して想像力を働かせてほしい。パラリンピックが、人と人との間のあらゆるバリアーを取り払う契機になるといい」。誰にとっても関係がある祭典になることを願っている。

カテゴリ: スポーツ 社会