狩猟技術継承急ぐ 農作物被害続出 − 岐阜新聞 Web
狩猟技術継承急ぐ 農作物被害続出
2017年11月16日08:43
写真:狩猟技術継承急ぐ 農作物被害続出
培った狩猟技術を次世代に継承すべく、92歳の今もイノシシ捕りを続ける鷲見米二さん=9月、中津川市蛭川、鷲見さん宅

◆92歳現役猟師「後継者足りぬ」

 狩猟が15日、解禁された。92歳にして岐阜県内最高齢の猟師鷲見米二(よねじ)さん=中津川市蛭川=はイノシシ捕りの名人だ。野生鳥獣による農作物被害が続く中、大きな役割を担う狩猟者だが、高齢化が進み、深刻な後継者不足に猟師の将来を憂う。「後に続くもんをつくらんと」。培った狩猟技術を次世代に継承すべく、猟を続ける。

 鷲見さんの狩猟歴は半世紀以上。今は一人でもできるわな猟「くくりわな」がもっぱら。山の地形、けもの道、イノシシの習性を熟知し、確実な場所にわなを仕掛ける。「他の人なら数日かかる猟も、米二さんなら1日」と中津川猟友会蛭川班事務局の小川正義さん(78)はその腕前に舌を巻く。

 有害鳥獣の捕獲依頼を受ける鷲見さんは生態系の変化を実感している。「昔は奥山にしかおらんかったイノシシが、餌がなくなったのか山を下りてきて、数も増えた」

 狩猟者の減少、高齢化は全国的な傾向。県内の狩猟免許所持者は、1970年度の1万5293人から、2016年度には3分の1の4797人まで減った。背景は「若い人の趣向が変わり、金と時間をかけてまで狩猟を楽しもうという人が減った」(県猟友会)ためとみられる。

 蛭川地区も例外ではない。かつては山仕事をする人が多く、70人ほどの猟友会員がいたが、現在は16人まで減り、60、70代が中心。技術を受け継ごうと鷲見さんからわなのかけ方を学ぶ勉強会を毎年開くが、若手の参加は少ない。「狩猟のこつは経験者に習うのが一番なんだが」と小川さん。「わな猟は手間がかかり、時間の融通が利く高齢世代が主力にならざるを得ない」と話す。

 行政も対策に乗り出した。鳥獣の捕獲体制が整わない地域では、市町村役場の職員が自ら狩猟免許を取る動きが出ている。県も有害鳥獣捕獲に従事する市町村職員の育成事業で後押しする。

 農作物被害の対策を講じるため近年、わな猟の免許を取る人が増え、狩猟免許所持者全体では4千人台で推移。田畑への柵設置も進み、県内の農作物被害は10年度の約4億8千万円から、16年度は約2億8千万円に減った。

 だが、イノシシやニホンジカの生息域が拡大し、新たな懸念も出始めた。岐阜大野生動物管理学研究センターの森部絢嗣准教授は「農作物対策は柵の設置で解決するが、個体数が増えれば交通事故や人を襲うなど生活被害も出てくる」と指摘。「狩猟者の確保は数だけでなく、捕り逃がさない狩猟技術の質も重要」と強調する。

 いかに技術を継承するかが課題となる中、明るい兆しも。蛭川では今年、40代の会員が新たに第一種の銃猟免許を取得した。鷲見さんは実践で技術を伝えようと、今季も山に入る。