オグリの里
笠松の厩舎、スタンド早期改修を

2018年03月24日 18:43

大型ビジョンが設置され、白熱したレースを繰り広げる笠松競馬

 V字回復による右肩上がりをキープ。2017年度の笠松競馬全日程が無事終了し、経営状況は良好だ。馬券販売は205億6000万円で、前年度よりも8%伸び、約15億円のプラスとなった。馬券のインターネット販売が堅調で、5年連続の黒字を確保した。

 馬券販売が200億円を超えたのは15年ぶりで、過去最低だった12年度の106億円と比べれば、ほぼ倍増となった。

それでも、笠松競馬の未来を明るくするためには、老朽化施設の早期改修、賞金・手当の回復によるスターホースの創出などが課題となっている。

 昨年は大型ビジョンの新設があったが、新年度の目玉事業はこれといって見当たらない。競馬場に足を運ぶファン目線で見ると、何よりも急がなくてはいけないのが、競馬場施設の安全確保だろう。築50年以上を経過して老朽化したスタンドなどの改修、耐震化工事を行ってほしい。特にハトがすみついたりした西スタンドは老朽化が進んでおり、崩落事故などがないことを願うばかりだ。

円城寺厩舎から笠松競馬場へ向かうため、堤防道路を横断する競走馬

 また、懸案の厩舎移転構想はどうなっているのか。13年10月、調教中に脱走した競走馬が軽乗用車と衝突し、男性2人が死傷する大事故が発生した。あれから4年半が経過。競馬場関係者は、装鞍所の出入りや道路の横断など、競馬場と厩舎を往復する競走馬の安全確保に万全を尽くしてきた。それでも国や世間が見る目は厳しく、事故防止に注意を促す「イエローカード」を突き付けられた状態には変わらない。乗用車の逃げ場がない堤防道路などで、再び競走馬による人身事故が起これば、競馬場の存続自体が危うくなることだろう。

 16年9月の時点で、県地方競馬組合は8億2000万円の環境整備基金を活用して、「スタンドや厩舎などの施設整備を行う」としていた。基金は17年度も7000万円積み増し。競馬場から北東へ1キロ余り離れた円城寺厩舎を、競馬場東側の薬師寺厩舎に集約し、2階建ての厩舎を建てる構想だが、最近では、厩舎関係者は「計画について、具体的には何も聞いていない」という。事故がまた起きてからでは遅い。基金を活用するなら、スピード感を持って厩舎の移転を進めてほしい。

レースを終えて、装鞍所から出る競走馬。警備員や厩務員たちが安全確保に努めている

 これに関連して、3月21日の最終レース直前、ファンが驚きの声を上げ、ハッとさせられることがあった。1頭の競走馬が返し馬の途中、ゴールを過ぎた辺りで騎手を振り落として放馬したのだ。馬は誰にも止められることもなく、そのままコースを1周以上走り、装鞍所の方へ。すると「かつての脱走事故」が脳裏をよぎったのだろうか、「やばいぞ」と大声が上がった。笠松に通っているファンはアクシデントにすごく敏感なのだ。かなりの距離を走った馬は競走除外となり、落馬した騎手は翌日の騎乗を取りやめた。

 馬主や厩舎関係者にとって大きな問題である「レース賞金・手当」については、残念ながら18年度は上積みはなく、据え置きとなったようだ。

 笠松競馬の馬券販売は15年ぶりに200億円を回復したが、1980年のピーク時には445億円も売れていた。インターネットはもちろん、電話投票もなく、笠松本場をメインに名古屋場外などで売っていた古き良き時代のことだ。

藤原幹生騎手の700勝達成セレモニーで、ウイナーズサークル前に詰め掛けたファンたち

 15年前と17年度のレース賞金を比較してみると、オープン馬による「東海クラウン」では、310万円だった賞金が130万円に。C級の下級クラスでは43万円だった賞金は18万円と、気前が良かった時代の4割程度にダウンしている。現在ではインターネット販売が主流で、手数料を支払う必要もあって単純には比較できないが、これまで大幅カットに耐えてきた厩舎関係者は、「売り上げが増えるのなら、賞金・手当も増やしてほしい」と来年度以降に期待しており、かつての水準に少しでも近づけるといいが。

 レース賞金の高さは、スターホースの確保にも直結する。笠松では、ラブミーチャン以降は中央との交流重賞で勝負できるスターホースが出現していない。昨年の名古屋重賞「でら馬スプリント」を制覇した生え抜きのハイジャ(井上孝彦厩舎)に期待していたが、故障がちで安定感に欠けている。ラブミーチャン記念とライデリーダー記念の2冠馬チェゴ(井上孝彦厩舎)は船橋へ移籍した。

 秋風ジュニアとジュニアクラウンを勝利したビップレイジング(笹野博司厩舎)はJRAへ移籍したものの、オープンでしんがり続き。笠松に戻り、20日には早速勝利を飾ったが、賞金が低くては、JRAや南関東など賞金の高い競馬場へと、いずれまた移籍してしまう。東海ダービーなどビッグレースを目指す笠松のスター候補を他地区へ流出させないためにも、賞金・手当の増額は必要になってくる。

今年も快調に白星を積み重ねる佐藤友則騎手(左)と井上孝彦調教師

 昨秋の笠松GPで2着だったエイシンヴァラー(園田、下原理騎手)は、高知・黒船賞(GⅢ)を勝ったが、単勝は何と234倍。2着はキングズガード(寺島良厩舎)で、馬単10万円超えの大波乱を呼んだ。全国のダートグレード競走では、地方馬が勝利を収めるケースが昨年から増えてきた。かつては「地方競馬の聖地」と呼ばれた笠松にも意地がある。レジェンドハンター(1999年)、ラブミーチャン(2009年)に続いて、10年周期で超大物がそろそろ出現するかもしれない。有能な調教師、厩務員とジョッキーたちが手腕を発揮してくれるだろう。次世代スターホースの誕生を楽しみに待ちたい。