オグリの里
昭和最後の有馬記念はオグリV

2018年12月21日 16:38

昭和最後の有馬記念優勝馬となったオグリキャップ

 今年の有馬記念は平成最後となるが、昭和最後の有馬記念を勝ったのはオグリキャップだった。

 昭和から平成へ、バブル景気で沸騰した激動期を駆け抜けて、有馬記念に2度優勝したオグリキャップ。ラストランでのオグリコールが強烈なインパクトを残しているが、タマモクロスとの「芦毛対決」を制した1度目のV(1988年)もすごかった。競馬ブームに火を付けたスーパーホースのGⅠ初制覇は、昭和最後の名勝負として語り継がれている。

 笠松時代に12戦10勝を飾り、JRAに移籍して鮮烈デビュー。重賞6連勝で迎えた天皇賞・秋は2着、ジャパンCは3着。同じ芦毛馬で1歳先輩のタマモクロスに、ともに「1馬身4分の1」届かなかった。芦毛対決は3度。オグリキャップにとってリベンジのラストチャンスとなったのが、3歳冬の有馬記念だった。

 芦毛両雄のほかにも豪華メンバーがそろった。前年覇者・メジロデュレン、マイルCS優勝のサッカーボーイ、宝塚記念馬スズパレード、菊花賞馬スーパークリークら出走馬は計13頭。

食欲旺盛で元気いっぱいだった現役時代のオグリキャップ

 オグリキャップには、3冠馬シンボリルドルフで有馬記念を連覇した名手・岡部幸雄騎手が騎乗。重賞5勝の手綱を取った河内洋騎手は、天皇賞・秋、ジャパンCで敗れたこともあり、岡部騎手に白羽の矢が立ったのだ。「まさか自分に依頼がくるとは」とびっくりした岡部騎手は、最初で最後の思いで引き受けた。河内騎手は「強烈シュート」の決め脚を持つサッカーボーイでの出走となった。馬券の連勝式は「枠連」しかなかった時代。有力馬の出走取り消しによる枠順の混乱を防ぐため、オグリキャップ、タマモクロス、サッカーボーイの3頭が単枠指定となった。

 いつも食欲旺盛で、特に冬場は太りやすい体質だったオグリキャップは、ベスト体重をキープする必要があった。有馬記念の本番前、美浦に滞在していたが、岡部騎手は中山競馬場への出張調教となる「スクーリング」を提案。往復約4時間の輸送、パドック周回から本馬場を回って、レース当日と同じことを全てこなし、馬体を引き締めた。臨戦態勢は整い、結果的にこの調教が優勝に大きく結び付いた。

「有馬記念、オグリキャップ制す」。宿敵タマモクロスを破ったGⅠ初勝利を伝える新聞記事(1988年12月26日付・岐阜新聞)

 レースは、サッカーボーイがゲートで打撲して出遅れ。名脇役・レジェンドテイオーが3年連続で逃げて、スズパレード、ランニングフリーが続いた。オグリキャップも中団の外から流れに乗ったが、ラストランとなったタマモクロスは最後方待機策。3コーナーからピッチが上がり、余力十分のオグリが6番手から進出を開始した。

 タマモクロスも3、4コーナーで大外から、まくり気味に先団を急襲。並びかけようとするタマモを待っていたかのように、岡部騎手の手綱に応えたオグリは、宿敵への闘争心に点火し一気に加速。ゴールまで、芦毛2頭が重なるように疾走し、美しくて力強いマッチレースとなったが、オグリは抜かせなかった。半馬身差をつけてゴール。タマモの追撃を封じて、最大のライバルにリベンジを果たした。デビュー2年目の武豊騎手が騎乗したスーパークリークが中を割って3位に入線したが、外のメジロデュレンの進路を妨害し失格。サッカーボーイが3着に繰り上がった。

 勝利インタビューで岡部騎手は「前半うまくためられたのが勝因。こんないい馬に乗れて、騎手みょうりに尽きる」と胸を張った。笠松競馬でデビューしてから1年7カ月、21戦目。「野武士」が天下取りを果たした歓喜の瞬間、勝負師の鮮やかな手綱さばきが光った。

笠松競馬場での里帰りセレモニー。有馬記念優勝を記念したオグリキャップの縫いぐるみも来場した(2005年)

 ジョッキーを引退した岡部さんは「勝った有馬記念では、ゲート前でのオグリの武者震いに安心した。いつも通り淡々とぶれないで仕事をこなした」と振り返った。グリーンチャンネルの競馬番組では「手応え良く、頑張ってくれた。すごくコントロールしやすくて賢い馬で、思い通りのレースができた。(騎手としても)『代打満塁ホームラン』に近い仕事ができた」と喜びを表現した。

 単勝人気はタマモクロス2.4倍、オグリキャップが3.7倍。枠連⑥-⑦は3.5倍で決着した。激動の昭和の時代を締めくくった最後の芦毛対決で、オグリキャップは「先輩、後は僕に任せてください」とばかりに世代交代を果たし、新時代の到来を予感させた。もちろん買っていた応援馬券。天皇賞・秋、ジャパンCで大きく外していたが、有馬記念では単勝と枠連をきっちりとゲット。こちらもリベンジできた。

ラストランでの有馬記念制覇。ゴール後には武豊騎手を背にオグリコールが響き渡った(笠松競馬提供)

 平成最後となる今年(23日・中山競馬場)は16頭がゲートインし、時代を象徴する名馬が栄光のグランプリホースの座をつかむことだろう。

 「世相を反映する」ともいわれる有馬記念。平成に入って12月23日に開催されたのは、これまで4度で、劇的な結末が多い。90年はオグリキャップのラストランで、日本の競馬史上最高の盛り上がりを見せた。ゴール後にコースを1周した武豊騎手は「競馬場が揺れるような歓声で、泣いているファンもいっぱいいましたね」と、オグリコールのすさまじさを愛馬の背中で体感した。

 米同時多発テロ事件があった2001年には、菊花賞馬マンハッタンカフェが勝ち、アメリカンボス2着で大万馬券になった。07年には、国枝栄厩舎の伏兵・マツリダゴッホが勝ち、12年には芦毛馬・ゴールドシップが制覇した。

 そして今年の勝ち馬は、どんなドラマを見せてくれるのか。岡部さんが乗りたい馬は、オグリキャップと同じ3歳のブラストワンピースだそうだ。通算2943勝、GⅠで37勝を飾ったレジェンドは、菊花賞で4着だった伸び盛りの若駒に期待。過去10年で3歳馬は5歳馬とともに最多の4勝。4歳馬が2勝で続いている。

 障害レースの絶対王者・オジュウチョウサンには武豊騎手が騎乗。1番枠を引き当て、有馬記念最多の4度目Vを狙う武豊騎手を背に、障害で鍛えた飛ぶような走りを見せてくれるのか。史上初の平地&障害の「二刀流」GⅠ制覇に挑戦。もし勝てば、大谷翔平投手のメジャー二刀流の年を象徴してドラマチック。平成の有馬記念を締めくくるのにふさわしい盛り上がりを見せるだろう。

 クリスマスへ向けて、現実的な夢をつかむなら、GⅠで10週連続勝利の外国人ジョッキーが騎乗するレイデオロ、シュヴァルグラン、モズカッチャンが有力。地方競馬出身馬で大きな夢を見るなら、門別デビューのリッジマンだ。平成最後のドリームレースに挑む精鋭16頭。ファンの胸を熱く焦がし、歴史と記憶に刻まれるような圧巻の走りを見せてほしい。