オグリの里
山田敬士騎手、笠松でも「まさか」

2019年01月26日 16:40

ゴールドジュニアのレース前、エリアントに騎乗し、パドックを出るJRAの山田敬士騎手

 何かとお騒がせの若手ジョッキー。重賞デビューは、ゲートイン前に夢と散った。

 24日、笠松競馬場で行われた3歳重賞・ゴールドジュニア(SPⅢ、1600メートル)。JRAの山田敬士騎手(21歳、美浦・小桧山悟厩舎)が、笠松のエリアント(笹野博司厩舎)に騎乗予定だったが、返し馬の途中に落馬して、放馬。競走除外になったため、中央、地方を含めて初めてとなる重賞挑戦はお預けになった。

 山田敬士騎手は昨年3月、JRAでデビュー。7勝を挙げる活躍を見せていたが、10月13日、新潟6Rで競走距離を1周間違える騎乗ミス。3カ月の騎乗停止処分を受け、14日に中山で復帰したばかりだった。

 笠松では、1981年12月の東海ゴールドカップで、井手上慎一騎手が同じように1周勘違いし、ファンが騒いで大荒れとなる事件があった。そのことは山田敬士騎手もネット上で知っていたというが、笠松参戦が決まった時点で、何か不思議な縁を感じたし、「復帰後初勝利を笠松で」という厩舎関係者の親心が伝わってきた。

返し馬でスタンド前を駆け抜けるエリアントと山田敬士騎手

 笠松にはJRA交流レースで2日間参戦。地元馬を含めて計9頭の騎乗予定があった。初日の3戦では3着が1回。2日目の第1Rは、本命◎が並び、単勝1.1倍と断トツ人気のドストエフスキーに騎乗したが、2着に敗れた。かつては山田敬士騎手の自厩舎の馬で、JRAでは勝てず、笠松の法理勝弘厩舎に移籍し、前走を圧勝していた。ファンも復帰後初勝利を期待したが、3番手から4コーナーで外に膨らみ過ぎて、勝利には届かなかった。

 ゴールドジュニアでは、前走3着だった穴馬エリアントに騎乗。重賞デビュー戦へのファンの期待は高まっていたが、「まさか」のアクシデントは起きてしまった。

 騎乗したエリアントは内馬場にあるパドックを出ると、西スタンド前に向かい、4コーナー過ぎから返し馬に入った。ほとんどの馬は、向こう正面から3コーナー奥にあるスタート地点で輪乗りの態勢に入るが、エリアントは、再びスタンド前のらち沿いを駆けて来たではないか。「もう1周するつもりか、山田君、意欲的だなあ」と眺めていると、パドック前辺りから馬はグングン加速。スタンドからは「山田君、振り落とされるよ」と女性ファンの悲鳴が聞こえた。

放馬して周回するエリアントを、ぼうぜんと見つめる山田敬士騎手

 急にスピードを上げて制御不能になったエリアントは、第1コーナー奥の装鞍所前も駆け抜けた。山田敬士騎手は身の危険を感じたようで、バランスを崩して飛び降りるように着地。そのまま放馬となったエリアントは、競馬場関係者の制止を振り切って周回を重ねた。3周を過ぎて、ようやく疲れたようでストップし、引き返してきたが、著しい疲労で競走除外となった。

 落馬した山田敬士騎手に、けががなかったのは幸いだった。最終10Rにも予定通り騎乗して5着。笠松での計8騎乗を2着1回、3着1回で終え、復帰後初勝利はならなかった。

 レース後、「落馬したけど、大丈夫でした。返し馬では、らち沿いをゆっくり走っていたら、スタンド前で、馬がハミをガツンとかんでしまった。加速して(装鞍所の)入り口に向かったので、落ちてしまった」。笠松での初騎乗については「きょうはレースの流れをつかめるようになった。2日間の経験をメインで生かそうと思いましたが、(放馬して)馬がかなり走ってしまった。申し訳ないです」と悔しそうに振り返った。

今後のレースに向けて闘志を燃やす山田敬士騎手

 騎乗したJRA交流レースでは、青木孝文厩舎のジョリルミエールで葉牡丹特別4着、グランシャピトーで冬将軍賞9着に終わった。

 美浦からの参戦は珍しいが、「青木先生と小桧山先生のおかげで、笠松で騎乗でき、『しっかりと乗ってこい』と言われました。今回は残念でしたが、交流レースでは、また笠松へ来ると思いますので頑張りたい。今週末は東京競馬場で騎乗します」と闘志を燃やしていた。

 母子家庭に育ち、「いままで母親に苦労をかけてきたので、今後はジョッキーとして恩返しをしたい。弟2人の学費を出してあげたい」と、競馬学校卒業時に抱負を語っていた。騎乗ミスや放馬など不運続きだが、どこか応援したくなるジョッキーである。

 初めて騎乗した笠松については「小回りで、タイトなコース。小技も必要なコースで、他の馬へのプレッシャーのかけ方とか、吉井友彦騎手らに教えてもらいました。2日間、面白かったし、勉強になりました」と引き締まった表情を見せていた。

 パワースポット・笠松での騎乗経験は、きっと中央のレースで生かされることだろう。昨年はデビュー2年目の川又賢治騎手が、笠松で1日3連勝を含めて計6勝を飾る活躍を見せ、中央でも大暴れ。笠松ではミルコ・デムーロ騎手とのトークショーにも参加し、ファンを楽しませてくれた。

 笠松競馬にとってもJRAの若手騎手の参戦は大歓迎だろう。重賞挑戦のチャンスはなかなか巡ってこないだろうが、山田敬士騎手には、笠松を『地方のホーム』と思って、これからも参戦し、勝利をぜひ飾ってほしいものだ。

ゴールドジュニアを制覇した兵庫のオオエフォーチュン

重賞初Vを喜ぶ兵庫の山田雄大騎手

 ゴールドジュニアを勝ったのは、兵庫の7番人気オオエフォーチュン(住吉朝男厩舎)だった。騎乗した山田雄大騎手は、デビュー10年でうれしい重賞初制覇。最後方からの競馬になったが、「末脚がいい馬で、坂の下りからスパートした。最後は伸びて、きっちり差してくれた」と笑顔。2、3着にはブライアンビクター(藤原幹生騎手)、サノオーソ(向山牧騎手)の笠松勢が食い込んだ。1着7番人気、3着8番人気で波乱のレースになった。

 皐月賞トライアルの地区代表馬選定レースでもあり、歴代優勝馬には、オグリキャップやラブミーチャンらの名前が並ぶ伝統のレース。かつてはこの一戦を制して、中央の重賞レースに挑戦するパターンが「笠松サクセスストーリー」の始まりだった。

 若手騎手といえば、地方競馬全国協会(NAR)の優秀新人騎手賞に選出された渡辺竜也騎手。22日、高知競馬場で行われた地方、JRA若手騎手による「全日本新人王争覇」にも挑戦。第1戦6着、第2戦3着で総合5位と健闘。3位とは1ポイント差だったが、表彰台には一歩届かず。優勝は大井の藤田凌騎手だった。