オグリの里
笠松から10年周期で超大物

2019年04月20日 11:02

全日本2歳優駿などダートグレード競走で5勝を挙げたラブミーチャン。笠松でもオッズパークグランプリを制覇した

 笠松競馬場育ちのスターホースにはどうやら「10年周期説」があるようだ。1979年のリュウアラナスからオグリキャップ、レジェンドハンター、ラブミーチャンと、これまで確かに10年周期で超大物が出現し、中央馬を倒してきた。

 平成から令和へと時代が大きく動く今年は、2009年のラブミーチャンGⅠ制覇からちょうど10年で、笠松競馬の当たり年になりそうだ。まずは高松宮記念にも出走したJRAのヒルノデイバロー(牡8歳)が笠松に移籍し、その走りが注目される。3歳馬や古馬勢とともに、デビュー間近の2歳馬からも新たなスターホースが誕生するかもしれない。

【10年周期でブレークした笠松育ちの名馬たち】
■1979年10月
 リュウアラナスが、地方所属馬による中央競馬のレースで初Vを達成した(中京・第4回地方競馬招待競走)。ダイタクチカラとのマッチレースで中央勢6頭を撃破。「笠松」の名は全国にとどろいた。

笠松競馬育ちの出世馬オグリキャップ

■1989年9~12月
 笠松育ち・オグリキャップの人気を決定づけたのが、マイルCS(1着)からジャパンC(2着)へのGⅠ連闘。有馬記念までの99日間に6レースをこなす過酷なローテーションで走り続け、競馬ブームに火をつけた。

■1999年10~12月
 安藤勝己さん騎乗のレジェンドハンターがJRAの重賞に挑戦。デイリー杯3歳S優勝に続いて、朝日杯3歳S(現・朝日杯FS)で2着。地方所属馬によるJRAの芝GⅠ制覇に半馬身まで最接近した。

■2009年11~12月
 ラブミーチャンがダートグレード競走のGⅠ「全日本2歳優駿」を制覇。GⅡ「兵庫ジュニアグランプリ」も勝っており、NARグランプリ2009の年度代表馬に、史上初の2歳馬で選出された。

 笠松に移籍してきたヒルノデイバローも大物感が漂い、先代・後藤保元調教師の遺志を受け継ぐ名門・後藤正義厩舎に入厩した。マンハッタンカフェ産駒で2014年10月、北海道・田中淳司厩舎からデビュー。門別で2連勝後、栗東の昆貢厩舎に移籍し、JRAのダートで羅生門Sなど4勝。芝のオープンで勝利はなかったが、重賞で2着3回(17年・阪急杯、スワンS、18年・函館スプリントS)と短距離戦線で活躍した。

高松宮記念に出走したヒルノデイバロー。笠松への移籍が決まって、活躍が期待されている

 ダート適性は抜群。門別時代に大差で連勝し、JRA移籍後の勝利も全て逃げ切り。笠松など地方の小回りコースは合いそうだ。高松宮記念の追い切りでは「衰えは感じない。ビシビシやれており、走り方さえ戻れば」と昆調教師。8歳、9歳の高齢馬でも活躍が目立つ地方ダート界。笠松で再出発するヒルノデイバローは、地方・JRA交流のダートグレード競走をあっさり勝つ力を十分に秘めている。東川公則騎手や藤原幹生騎手が所属する後藤正義厩舎。順調なら、今年の地方ダート界の主役を張れる一頭である。

 近年は地方競馬のダートグレード競走に狙いを定めて、JRAから地方に移籍するケースも目立ってきた。一昨年にキタサンミカヅキが船橋へ、昨年はJRAで重賞2勝を挙げたグレイトパールが佐賀に移籍。そういった流れの一環で、ヒルノデイバローも笠松に移籍。地方はJRAに比べて厩舎への預託料も安いし、新たな活躍の場を求めて移籍するケースは今後も増えそうだ。

 今年50歳になった武豊騎手は、平成の時代について「デビューからずっと乗ってきましたが、日本馬は強くなりましたね。馬も騎手も技術が向上している」と振り返っていた。ジャパンCで勝ち続けている日本馬の活躍を見れば納得だが、地方競馬に目を移せば、バブル経済崩壊後、経営体力がない競馬場は次々と廃止に追い込まれ、笠松も危険な状態だった。2004年から12年までは馬券販売額が大幅にダウン。賞金・手当のカットとともに、ダートグレード競走で戦える強い馬の入厩は減り、弱体化した。

 JRA勢との能力差を縮め、地方馬のレベルアップを図るには、近年ではやはり調教施設の充実が第一。いかに競走馬の脚力や体幹を鍛え上げるかである。坂路の調教施設は門別(長さ900メートル)や愛知の弥富トレセン(長さ400メートル)にもあるが、馬券販売のV字回復とともに、これからは各地方競馬場に併設する形で、坂路施設の整備を進めるべきだろう。

 坂路調教は、フェブラリーSを勝ったメイセイオペラ(岩手)も福島で取り入れていた。最近ではハッピーグリン(北海道)が坂路で追い切って、JRAのGⅠに挑戦。アーモンドアイがレコード勝ちした昨秋のジャパンCでは、ハッピーグリンも2分22秒2で、オグリキャップ(1989年)と同タイムで走り抜き、大健闘の7着。ファンを驚かせた。

 ラブミーチャンは、一時スランプもあったが、ノーザンファームしがらき(滋賀県)の坂路で鍛えられた。地方所属馬としては異例だったが、当時の柳江仁調教師も「滋賀で頑張ってますよ」と語り、ラブミーチャンは復活。6歳時にはダートグレードを2勝するなどラストランまで4連勝を飾った。地元では「黒字経営が続く笠松競馬場の再整備に伴う余剰地の活用を図りたい」という声もある。笠松競馬場の近くの堤防沿いなどに、短くてもいいので坂路施設を整備できたら素晴らしい。脚力アップで強い馬づくりににつながると思うがどうだろう。

今年1月に開かれた笠松・ゴールドジュニアのゴール前。JRA・皐月賞へのステップレースにも選定されている

 平成の暗黒時代を乗り越え、生き残った地方競馬では、令和の新時代には「JRA馬に対抗できる馬づくり」への地殻変動が起きるだろう。最近のJRAのGⅠレースでは「社台グループの運動会」などと皮肉を言われるように、「またノーザンファームか」と感じるファンは多い。オーナーサイドの考え方一つではあるが、地方所属馬によるJRAのGⅠ挑戦を、そろそろ戦略的に考えてもいいのではないか。高額な良血馬をあえて地方でデビューさせて「天下取りの出世物語」を演出しながら、頂点を目指せる実力馬を育てるとか...。地方・中央の交流を深め、生産牧場、馬主らの積極的な仕掛けがあれば、競馬ファンをもっと楽しませることができるだろう。ラブミーチャンがずっと笠松で、中央との交流重賞であるダートグレード競走に挑み続け、全日本2歳優駿などで5勝を挙げたように、その地方競馬生え抜きのスターホースを育ててほしい。

 交流元年にライデンリーダーが草分けとなって以来、地方から中央のクラシックレース挑戦の道は開かれている。今年1月、笠松で行われた3歳重賞・ゴールドジュニアの1着馬は、北陸・東海・近畿代表として、皐月賞トライアル出走権を獲得。兵庫のオオエフォーチュンが勝ち、3月の若葉S(2着までに皐月賞出走権)に挑んだが、10着に終わった。2着馬とは2秒差。現状ではこのタイム差が、中央馬と地方馬の力の違いといえよう。

 新年度がスタートした笠松競馬。3月下旬には、レース以外のことがネット上でお騒がせとなり、新聞、テレビでも大きく取り上げられた。長い間、公式ツイッターは停止していたが、再開を期待するファンは多かった。そんな中、注目された4月・新緑シリーズの馬券販売はまずまずだった。最終日の3億4500万円など4日間で約11億円。前年比で13%増となって、関係者は一安心か。入場者数は横ばいだった。

一昨年のオグリキャップ記念を制覇したカツゲキキトキト

 4月25日には平成最後のオグリキャップ記念が開催され、過去3年の優勝馬であるグルームアイランド(金沢)、カツゲキキトキト(名古屋)、エンパイアペガサス(岩手)が勢ぞろいする。2500メートルの長距離戦で、佐賀のグレイトパール、兵庫のメイショウオオゼキらも出走予定。地元・笠松勢はキタノイットウセイ(宮下瞳騎手)、デジタルフラッシュ(藤原幹生騎手)、シーザワールド(松本剛志騎手)の3頭が迎え撃つ。安藤勝己さんの予想会(オグリキャップ記念&天皇賞・春)も開かれ、大いに盛り上がりそうだ。

 昨年の東海ダービー馬・ビップレイジング(笹野博司厩舎)の復帰が待ち遠しいし、ヒルノデイバローの新たな挑戦にも注目。地方競馬の聖地・笠松復活に向けて、真のスターホースは出現するのか。「笠松10年周期説」を唱えたからには、2歳馬でも古馬でもいいから、ダートグレード戦線などで大ブレークしてもらいたい。