オグリの里
笠松競馬の魅力体感、バックヤードツアー

2019年08月09日 17:09

発走地点でゲート内に入るバックヤードツアーの参加者

 笠松競馬場内の未体験ゾーンへようこそ! レース発走のスターター気分が味わえ、装鞍所などを見学できる「バックヤードツアー」は今夏もお盆期間の8月13、14日に計4回開催。普段は非公開で足を踏み入れることができない「競馬場の裏側」を案内してもらえ、一度は参加したいツアーだ。これまで2回同行したことがあり、笠松独特のゲートインの順番や、ジョッキーの私生活トークなども聞くことができた。笠松ファンに好評のバックヤードツアーの楽しさを紹介する。 

 参加者はオグリキャップ像前に集合。各回6人ずつで、東海3県のほか、千葉や京都などからの「旅打ちファン」の姿も。ゲート付近に移動すると、発走委員や調教師らが発馬機の操作方法やスタート時の苦労などを説明。ゲート内は思ったよりも狭くて、圧迫感があり、レースに挑む競走馬にとっては最初の難関となる。日頃から調教師や騎手は、競走馬が立ち上がったり突進したりせず、スムーズにゲートインできるように、調教に励んでいる。

 笠松のレースはフルゲート10頭立てだが、新たに導入された発馬機なら12頭が入れるという。コースの幅員は20メートルだが、金沢は同じく20メートルで12頭立てである。本年度予算案には、着順表示システムを現在の10頭から12頭立てに変更する改修工事の費用も盛り込まれていた。JRA交流レースや「くろゆり賞」など全国交流重賞では出走登録馬も多い。将来のダートグレード競走復活に向けて、笠松も12頭立てのレースができたらいいが...。

発走地点では、ムチを手に競走馬ゲート入りの苦労なども学んだ

 ゲートの前扉は電磁石の力で開閉され、後ろ扉がロックされると馬はバックできない。マット付きで暴れてもけがをしないようにしてあるが、ゲート入りを嫌がる馬には、ムチを見せてしっぽなどを触る。それでも入らないなら、パチンとたたいたり覆面をしたりして、あの手この手でゲートに誘導する。活躍馬ハイジャ(引退)で、くろゆり賞に2年連続挑んだ井上孝彦調教師は「いつもはスッと入る馬でも、すぐに入りたがらない時は走らないよ」と。参加者もムチを手に、ゲート誘導の苦労を学んでいた。
 
 意外だったのは、ゲートインの順番。競馬ファンなら知っている人も多いだろうが、馬番が奇数の馬が先に入り、偶数の馬が後から入るのが一般的。JRAをはじめ、名古屋、園田競馬など各地で実施されている。ところが、笠松競馬は違っているのだ。これまで何となく「奇数、偶数に関係なく、ばらばらとゲートインするなあ」とは感じていたが、発走委員の説明で「笠松方式」を初めて知ることができた。ゲート入れは3頭ずつで、馬番が「1、4、7」から「2、5、8」「3、6、9」の順で入るという。残る10番がラストとなる。レース映像で改めて見てみると、確かにそうだった。この順番、マージャン経験者には分かりやすいだろうし、馬券の検討でも活用することがある数字の並びである。

ゲート前でスターターを体験する参加者

 レース発走が近づき、ジョッキーたちは待機所で輪乗りの態勢に入っていた。黙々と騎乗馬の気合乗りを高めているように見えるが、「レースが終わったら、きょう何食べる?」とか話すこともあるという。スターターの合図、ファンファーレとともに、出走馬はスムーズにゲート入りし、勢いよく飛び出していった。ツアー参加者は、このスターターをレースの合間に体験することができ、緊張気味にスタート台へ。発走委員のアドバイスを受けながら、「レリーズ」という握力計のような遠隔操作のスタートスイッチを力強く握ると、ゲートの扉が一斉にオープン。レースを発走させる快感を味わっていた。
 

騎乗時に使う馬具の説明をする東川公則騎手。参加者の質問に答えながら、交流を深めていた

 馬場管理では、走路整備も大切な作業。初めて笠松競馬場に来場した女性ファンが、ダートコースを見て「まるで砂浜みたい」と驚いていたコメントをネット上で見たことがあるが、笠松の砂は瀬戸市産で良質。美しくてきめ細かく、初参戦のJRAジョッキーもびっくりしていた。砂の深さは9~10センチで、約3000トン分をコースの内から外へ均等に敷き詰めるという。

 一行は車で装鞍所に移動。3年前に見学した時には、厩舎から競馬場入りした競走馬の馬体重を量っていた。馬にとっても夏場は暑さとの闘いでもあり、ミスト付きで快適そうだった。検量を終えたばかりの東川公則騎手が、抱えていた騎乗時の馬具の説明を行った後、ツアー参加者から質問攻めとなった。

参加者の前で、馬具を手に検量をする佐藤友則騎手

 騎手になって良かったことは「レースでの勝利は自分にしか味わえなくて、いい気分になります」。レースでの勝負服は「1人5、6着は持っているでしょう。勝負運がついている服は、ビッグレース用に着ることがあります」。相性が悪い馬とのレースでは「馬は気まぐれですから、なだめながら、途中からは開き直って乗っています」。減量の苦労は「普段はお酒は飲まないで、温かい緑茶が多いですね。野菜中心で米は食べない。体重は増えないです」などと答え、ファンとの交流を深めていた。

 昨年夏には佐藤友則騎手が参加。第1Rを勝って上機嫌。馬具の説明を行った後、これまでのジョッキー人生なども語ってくれた。

レースを終え、装鞍所にある枠場に入る1、2着馬とジョッキーら

 猛暑続きの中、減量の秘策について「現体重は52キロ。きょうは3~9Rの騎乗がないので、調整ルームの屋上でオイルを塗って日焼け(日光浴)に励みます。1キロぐらいは落とせますよ」。食事については「1日2食で、朝食べてもお米の量はそんない多くないです。調整ルームではお茶やサプリメント系ですね」。

バックヤードツアーの最後には、車でダートコースをぐるり

 夏休みで親子参加の中学生には恋愛のアドバイスも行い、「女性としゃべる時は、相手の目を見て照れずに気持ちを込めて」と力強い言葉。「僕は14歳からこの仕事を目指したが、夢に向かって後悔はしない人生を歩んでほしい。騎手試験には3回目で受かりましたが、約300人中、合格は18人でした。浪人中は新聞配達や喫茶店でのバイトも経験した。努力すれば結果は出ます。座右の銘は『失敗しても後悔するな』です」と。佐藤騎手の勝負服を手にした参加者もいて、サインなどで触れ合いの場は大いに盛り上がった。

 装鞍所には、レースを終えたジョッキーたちが戻ってきた。勝った馬と1着の「枠場」へ入り、調教師や厩務員らの出迎えを受けてホッと一息、笑顔を浮かべていた。最後に、参加者は車で走路をぐるり。第2コーナーから、傾斜のある向正面を経て、第3、4コーナーへ。ジョッキー目線でコースを眺めて1時間余りのツアーが終了。笠松競馬場の新たな魅力を体感していた。

 バックヤードツアーは、ファンを大切にする競馬場スタッフの愛情が詰まったイベント(参加無料でお土産付き)。お盆期間や年末などに年2、3回開催されているが、申込者多数の場合はファンクラブ会員を優先とした抽選となる。ツアー参加者は暑さ対策などを万全にして、「笠松の顔」でもあるジョッキーらに思い切った質問をぶつけてみよう。