オグリの里
水野翔騎手、たくましく成長
インタビュー「笠松でも重賞V、リーディングを」

マカオで重賞初Vを飾った水野翔騎手。笠松のレースに復帰し、新たな闘志を燃やしている

 「お帰り、また笠松で頑張って」。22歳の水野翔騎手が、短期免許でのマカオ遠征(タイパ競馬場)を終えて、約3カ月半ぶりに笠松競馬に復帰。海外武者修行で心身を鍛えて、たくましく成長した姿を見せてくれた。

 所属厩舎の笹野博司調教師らの理解もあって、マカオに挑戦できた水野騎手。遠征前の約束通り、けがなどなく無事に帰ってきてくれ、待っていたファンの声援を受けた。11日のレース後には、装鞍所での笑顔にこちらも一安心。新しく染めた髪もいい感じで「カラフルにいこうという気持ち」を込めたそうだ。マカオでの重賞Vやハプニング、競馬に懸ける熱い思いなどを聞いた。

 ―久しぶりの笠松での騎乗でしたが、どうでしたか。1Rは後方から追い上げて2着でしたね。

 「きょうは6頭に騎乗しましたが、笠松でも『マカオ乗り』しちゃって勝てなかった。直線が長いマカオでは、4コーナーを内々で我慢して騎乗していましたが、笠松は直線が200メートルしかなくて...。3~4コーナーで内につけて、外に持ち出したが、馬群を割れなかった(1番人気で2着)。それでもJRAからの転入馬を、しっかりと動かすことはできた。もう少しうまく乗れば勝てたかもしれないので、次に生かしたいです」

笠松復帰初日、レースに挑む水野騎手

 ―3Rは7番人気の伏兵馬で2着でしたね。

 「一撃ありそうな馬で、指示通り反応して伸びてくれた。今は馬を動かすことに自信を持って乗れている。折り合いやコース取り・展開など、うまくはめていけば結果につなげられる」

 ―水野騎手がよく言う「はまる」とは、どういうことですか。

 「鞍のはまりとともに、馬の重心にぶれずに寄り添って乗って、動かせるようにすることかな。マカオへ行って、そのポイントがつかめるようになりました」

 ―マカオではG2の「サマートロフィー」(ダート、1350メートル)で自身初めてとなる重賞制覇を果たし、現地の関係者や日本のファンを驚かせましたね。

 「レース前、『オープン』とは知っていましたが、まさか『G2』とは思っていなくて...。トレーナーから『行け』と言われて逃げる作戦で、マイペースで運んでマークされずに勝つことができた。馬の肩に掛けられたレイを見て、ようやく勝利を実感できた。短い距離でのレコードホルダー(ダート、1050メートル)の馬でした」

 「でも、最初の頃は乗れていなかった。マカオは内から2頭目までにいないと勝てない馬場で、隙があったら前に入られちゃう。すごくコンパクトなコースで、制裁も厳しかったです」

 ―重賞初Vで騎乗したファスバ(5歳せん馬)は7番人気でしたね。相性が良かったですか。

 「とても良かったです。勝ったことでオーナーにも気に入られました。マカオの新シーズンは9月スタートで、10月のファスバのレースでは、1日だけ乗る『スポット参戦』で呼ばれるかもしれません。先生には承諾も得ています」

 「ファスバでは2戦目を差し切って勝った。ファスバに以前騎乗していたのがマカオのリーディング騎手で、『いい乗り方をしているよ』と言ってもらえた。最終日にも1勝し、計4勝を挙げることができ、関係者から『何で日本へ帰るの』とも言われた。ファスバを管理しているトレーナーのMCタンさん(リーディング3位)や、スタンレー・チンさん(同トップ)にもかわいがってもらえた」

 初めての海外遠征だったが、南関東のトップジョッキーとして活躍した元船橋の中野省吾騎手(27)がマカオで騎乗していて、大きなサポートを受けた。

2歳戦「秋風ジュニア」では、ローズレイジングに馬主服で騎乗した水野騎手

 「マカオでは最初、馬を動かせず、結果を残せなかった。2週目は攻め馬やレースでも声が掛からず、馬に乗せてもらえなくて、僕の精神は『ずたぼろ』でした。それでも省吾さんの教えがあって、いい方向に修正して何とか動かせるようになり、重賞を勝てました」

 マカオではG1レースにも騎乗。現地へ応援に駆け付けた笹野調教師と渡辺竜也騎手の前で、勝利も飾った。遠征中に57戦し4勝、2着8回、3着3回と好結果を残した。

 ―笠松に戻ってきたが、これからの目標は。

 「もちろん、笠松で頑張ります。まずは重賞レースを勝ってみたいし、笠松でリーディング1位になりたい。どんな馬でも、ゲートから出してポンと動かして、勝てれるようにしたいです。来年は南関東(期間限定騎乗)でも乗ってみたいです。それには今年、笠松でリーディング5位(現在45勝で7位)以内に入って(25歳以下の若手騎手が対象)、申請を出す権利を獲得したいです。通算200勝以下での枠(技術研さん騎手)もあるので挑戦したいです」

 ―マカオで騎乗し、海外競馬を経験しましたが。

 「将来的な一番の目標は、香港で騎乗することです。イギリスなど世界各地の競馬場で乗りたいです。マカオでの重賞Vは賞金面でも重みがあったし、自信がついた。海外へ行くチャンスがあれば、これからもチャレンジして結果を出していきたいです」

 いきなりG2勝利という快挙を達成。マカオで意外性を発揮してくれたが、競馬以外でのハプニングについても語ってくれた。

笹野博司厩舎の若手ツートップ復活。成長目覚ましい渡辺竜也騎手(右)と水野騎手

 「マカオに着いた初日は、野宿をしました。
ジョッキークラブが宿舎に連絡するのを忘れていたんです。省吾さんに荷物を預けて、競馬場近くで屋根のある所を探してリュックを枕にして寝ました。競馬がなかった平日には、タイにも旅行したが、省吾さんは寝ていて、ホテルに入れなかった。この時も、野宿でちょっと仮眠してから、クラブ(ディスコ)へ行きました。宿舎ではネギの切り方なども覚え、自炊をしました。暇な時間には、何事も『遊び』を入れながら、音楽を聴いたり、料理をしたりしていた。野宿したつらさなど、いろいろな体験をして、少しは成長できた気がします」

 復帰初日の笠松、待望の12頭立てもスタート。最終レースを勝ったのは渡辺竜也騎手で、水野騎手とのリーディング厩舎ツートップが復活した。今夏、渡辺騎手もストーミーワンダーで重賞2勝を飾るなど成長著しい。

 ―水野騎手の留守中、どうでしたか。

 渡辺騎手「自厩舎の馬にたくさん乗せてもらえ、勝つことができて、リーディング3位に上がりました。攻め馬が増えても、それほど苦になりませんでした。水野さんが戻り、他厩舎の馬にも乗れるようになって良かったです」

海外経験豊富な藤井勘一郎騎手(左)。今年、JRAデビューを果たし、「鈴蘭高原特別」をピラミッドファラオで差し切り、笠松でも勝利を飾った

 この日の笠松ではJRA交流戦も行われ、オーストラリアなど世界13カ国を転戦し、今年、35歳でJRAデビューを果たした藤井勘一郎騎手(栗東)が参戦。「鈴蘭高原特別」をピラミッドファラオで鮮やかに差し切り勝ち。韓国G1を日本馬で2勝している豪腕で、来場者は「藤井君、うまいなあ」、「的場文男騎手のように迫力ある騎乗」と驚いていた。

 藤井騎手は4年前、門別(短期騎手免許)で日本デビュー。ホッカイドウ競馬時代の水野騎手とも腕を競った。この日の笠松では3、5Rでともに騎乗。3Rで水野騎手が2着で、5Rでは藤井騎手が笠松初勝利を挙げた。藤井騎手にもコースの感想などを聞いた。

 ―初めての笠松競馬の印象はどうでしたか。

 「(計5レースに騎乗し)笠松は乗りやすいコースだと思いました。名古屋競馬の安部幸夫調教師から、コースの傾向や乗り方の癖などを聞いていて2勝できた。JRA交流戦の前に、レーススピードなど感覚をつかむことができ、うまくいきました。オーストラリア時代から付き合いのある厩務員さんの担当馬で勝つことができて良かった。笠松は危ない騎乗もなくて、フェアな競馬場だと思いました」

 ―水野騎手がマカオで重賞を勝ちましたが。

 「かける君ですね。門別で一緒に騎乗したことがあり、彼のことを覚えていて、騎乗センスがいいことも知っていた。さっき、マカオで勝ったことを聞いて僕もうれしかった。若いんだから、これから笠松や南関東でも重賞を勝つなどして、どんどん結果を残してほしい」とエールを送っていた。

あと1周、秋風ジュニアでゴールを目指す各馬

 12日の「がんばれ!2歳優駿」で復帰後初勝利を挙げた水野騎手だったが、制裁が厳しいマカオでの騎乗停止が日本でも適用され、次開催の笠松競馬では乗れないとのこと。また、笠松では5月に水野騎手の海外遠征壮行セレモニーはあったのに、マカオ重賞の優勝報告セレモニーは開かれていない。「まず1勝したい」と旅立ち、笠松競馬を世界にアピールしてくれて、ファンは喜びの声を聞きたかっただろうけど...こちらも、ちょっと残念だ。

 インタビューの最後に水野騎手は「地元・笠松で騎乗技術を磨いて、一つでも多く勝てるように頑張っていきたいです」と謙虚な姿勢を見せていた。好きな言葉は『疾風迅雷』だそうだ。まだ20代前半で、ジョッキー人生は長い。まずは笠松でスピードとパワーを磨いて、「勝ち切る競馬」を身に付けたい。そして、ワールドワイドに羽ばたく大きな夢に向かって駆け抜けていってほしい。