オグリの里
オグリキャップ記念、マイフォルテ制覇
画面越しにファン声援、1日の馬券売り上げ8億円超

2020年05月01日 15:53

オグリキャップ記念を兵庫のマイフォルテで制覇した大山真吾騎手

 「オグリキャップ記念」。中央競馬にはないメモリアルレースが笠松競馬にはある。地方・中央交流の懸け橋となって駆け抜けたスーパーホース。小さな競馬場で育った芦毛馬は、最後まで諦めない感動的な走りで見る人を勇気づけ、時代を超えて「永遠のヒーロー」になった。

 その誇りを胸に、笠松の騎手・調教師をはじめ競馬関係者は、競馬場存続・再興のバトンやたすきをつないで、応援するファンと共に懸命に走り続けてきた。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、無観客開催となったが、テレビやインターネット中継などで、笠松競馬へのファンの関心は高く、1日の馬券売り上げは8億円を突破した。

オグリキャップ記念のゴール前。外のマイフォルテ(大山騎手)が2頭を差し切り、栄冠をつかんだ

 4月30日、笠松競馬場で行われたオグリキャップ記念(SPⅠ、地方全国交流)は、大山真吾騎手が騎乗した兵庫のマイフォルテ(牡6歳、田中一巧厩舎)が、1番人気に応えて重賞初Vを飾った。2着は佐藤友則騎手が騎乗した船橋・キャッスルクラウン(牡6歳、渋谷信博厩舎)、3着には名古屋のマコトネネキリマル(牡4歳、角田輝也厩舎)が粘り込んだ。

 今年はフルゲート12頭立てでゲートイン。新型コロナの影響もあって、遠征馬は2頭のみで名古屋勢も2頭。笠松勢は8頭が挑み、2009年のクインオブクイン(倉知学騎手)以来、勝利から遠ざかっていただけに、地元の意地を見せたかったが...。アリオンダンス(牡7歳、笹野博司厩舎)の4着が最高で、2番人気のニューホープ(牡4歳、田口輝彦厩舎)は7着に終わった。

 コースを2周する2500メートルの長距離戦。スタンドは静寂に包まれていたが、レースは熱い展開になった。名古屋のラッキーモンキーが先手を奪い、ゆったりとしたペース。2周目の3、4コーナーから各馬が動きだし、最後の直線では、佐藤騎手の気迫あふれる追い出しにキャッスルクラウンが反応。岡部誠騎手のマコトネネキリマルとの一騎打ちかと思われたが、もう1頭が突っ込んできた。残り100メートル、大外から末脚を爆発させたのがディープインパクト産駒のマイフォルテで、ゴール前ではグイッと伸びて4分の3馬身先着。前の2頭を一気に差し切った。
 

優勝馬と喜びに浸る騎手や厩舎スタッフ

 優勝騎手インタビューでは、ビッグレースを飾った大山騎手がただ一人お立ち台へ。「直線を向いたら、一伸びしてくれた。距離が長いので、道中は内で楽をできたらと。(スローペースだったが)とても乗りやすく、ペースに対応できる馬なので、一生懸命に追いました。僕自身、笠松で初めて勝つことができ、とてもうれしいです」とにっこり。マイフォルテとのコンビで4連勝。「馬の状態がすごくいい時に乗せてもらい、このまま負けないように頑張りたい」。無観客レースではあるが「またお客さんが入れるようになるまで、僕らも頑張っているので、画面越しに応援してください」とファンに呼び掛けていた。
 
 この馬のいいところは「しっかりと脚を使えること。4番という好枠が当たり、インのいいポジションからリズム良く行けた」とも。副賞には「飛騨牛」などが贈られ、ファンにプレゼントされる色紙のサインにも応えて、うれしそうだった。

 勝ったマイフォルテは3歳時に笠松のレース(岐阜金賞3着)を経験していた。陣営では、調子が良く、折り合いの心配がない長距離戦で好勝負を期待していた。田中調教師は「(マイナス18キロだったが)そんなに心配していなかったが、思ったより減っていた。輸送が課題かな」と、次走は地元・園田の六甲盃(6月4日)を予定している。

残り1周のゴール前。勝ったマイフォルテの後続には、ニューホープ(10)など笠松勢がつけていた

 地元・笠松勢の大将格だったニューホープは、これまで重賞4勝。笠松ではいずれも1900メートル戦の岐阜金賞、東海ゴールドカップ、マーチカップで3勝。ここを目標に順調に仕上がっていたが、中団から伸び切れず、まさかの完敗。残念ながらレース中に左前脚を痛めたのが原因で、放牧に出す予定だという。

 1992年に創設され、オグリキャップの功績をたたえる看板レースも29回目を迎えた。97年から2004年までは、地方・中央交流のダートグレード競走(GⅡ)として行われた。オグリキャップに騎乗した騎手では、98年に安藤勝己さんが笠松・サンディチェリーで、99年には武豊騎手がJRA・ナリタホマレで勝っている。当時の1着賞金は4000万円だったが、経営難から2005年以降は500万円(地方交流レース)に削減された。その後、経営改善から昨年1000万円に倍増され、今年は1200万円に増額された。

 無観客レースが続き、経営状況はどうかというと、この日の笠松競馬の売り上げは8億774万円で、園田競馬の数字をやや上回った。オグリキャップ記念開催日では、一昨年の3億5800万円、昨年の5億4800万円から一気に「8億円超え」を達成。オグリキャップ記念単独では1億9000万円。この日の地方競馬唯一の重賞で「全国メイン」として行われ、グリーンチャンネルでも中継され、画面越しから声援を送るファンの注目を集めた。

 メインレース前の10Rは「小栗孝一メモリアル」として行われ、名古屋の木之前葵騎手が騎乗したヒーズインラブが優勝。女性ジョッキーとして活躍を続け、地方通算400勝目のメモリアルレースにもなった。中央競馬では重賞勝ちもある馬で、ゴール寸前、笠松のヴィクトアリーとチェゴをあっさりと抜き去った。一方で、ウインター争覇Vのキタノナシラは故障し、ゴール前では騎手が下馬した。無観客ではあるが、人馬はやるべき事に集中し、いつも命懸けでレースに挑んでいる。馬主さんや厩舎スタッフの言葉通り、やはり無事にゴールし、けがのないことが一番である。

初日メイン・麗春特別では、深沢杏花騎手がプラピルーンでデビュー3勝目を飾った(笠松競馬提供)

 4月28日の8Rでは深沢杏花騎手が、自厩舎の馬でうれしい2勝目を飾った。騎乗したプティドバトゥ(牝4歳、湯前良人厩舎)は芦毛馬で、好スタートから積極策で逃げ切った。2月には関本玲花騎手にも白星をプレゼントしており、勝利の女神となっている。メイン・麗春特別ではプラピルーン(牡4歳、井上孝彦厩舎)に騎乗。先頭をキープして15日の初勝利に続いて連勝となった。1日で2勝を挙げる活躍で、先陣争いが激しい笠松コースでのレースにも慣れてきた。デビューして1カ月。緊張もあっただろうが、3勝できたのはまずまず。追って馬を動かすセンスがあるし、当面は負担重量4キロ減の恩恵を生かせる。騎乗馬も多く、「1年目30勝以上」という目標は達成可能だ。

 女性ジョッキーの20年ぶり加入もあって、地方競馬ファンの笠松への関心も高まってきた。騎手リーディングでは筒井勇介騎手が44勝でトップを奪った。2位は渡辺竜也騎手で40勝。高木健騎手(55)は地方通算1100勝まであと1勝。騎乗数は少ないが、今年15勝を挙げて勝率25%は笠松勢のトップ。オグリキャップ記念ではハーリーバーリーに騎乗し5着。ベテラン健在で、盛り上げてくれるのは心強い。無観客開催でも、出走馬一覧表、インフォメーション&成績表は発行されており、再びファンが来場できる日を願う競馬場の心意気が感じられる。笠松開催はオグリキャップシリーズ後半戦の7、8、11日へと続く。